研究課題/領域番号 |
16K01460
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
若林 秀隆 横浜市立大学, 附属市民総合医療センター, 助教 (80508797)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | サルコペニア / 嚥下障害 |
研究実績の概要 |
心臓血管術後に嚥下障害を認めた患者の前サルコペニアの有病割合、および嚥下障害との関連を検討した。 研究デザインは後向きコホート研究。対象は2010年4月から2015年9月に当院で心臓疾患および大動脈疾患に対する手術を受けた後に、嚥下障害に対する言語聴覚療法(ST)を実施した連続症例95人のうち、脳梗塞を合併しなかった65人。周術期のCTで第3腰椎レベルの大腰筋面積を測定し、身長の2乗で除した数値を骨格筋指数とした。前サルコペニアの骨格筋指数カットオフ値は、男性6.36、女性3.92とした。ST開始時のADLはバーセル指数で、退院時の嚥下機能は藤島の嚥下レベル(FILS)で評価して関連を検討した。 結果は男性50人、女性15人、平均年齢73±8歳。原因疾患は大動脈瘤31人、大動脈解離13人、弁疾患11人、虚血性心疾患9人、心室中隔欠損症1人。入院からST開始まで中央値26日、ST開始から退院まで中央値33日。平均骨格筋指数は男性4.72±1.37、女性3.33±1.42で、53人(82%)に前サルコペニアを認めた。バーセル指数中央値は25点。気管切開カニューレを12人に認めた。退院時FILSは1:4人、2:3人、3:6人、4:3人、5:1人、6:1人、7:6人、8:17人、9:24人。前サルコペニアの有無とバーセル指数(25 vs. 57.5, p=0.013)、気管切開カニューレ(p=0.035)、退院時FILS(p=0.028)に有意な関連を認めた。前サルコペニアと気管切開カニューレで調整した順序ロジスティック回帰分析では、両者とも退院時FILSと独立した関連を認めた(p=0.028, p=0.035)。 心臓血管術後に嚥下障害を認めた患者では前サルコペニアを認めることが多い。前サルコペニアは嚥下障害と関連する。ADLも嚥下障害と関連しておりサルコペニアの嚥下障害が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に予定していた後ろ向きコホート研究が予定通りに終了し、その研究結果をまとめた論文がアクセプトされ掲載まで進展したため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に前向きコホート研究で、摂食嚥下障害を認める全患者を対象に、サルコペニアの摂食嚥下障害診断フローチャートを用いて、サルコペニアの摂食嚥下障害の有病割合を調査する。さらにサルコペニアの摂食嚥下障害の可能性がある患者を対象に、摂食嚥下リハビリテーション開始時のサルコペニアの程度、栄養状態、栄養管理が予後に影響を与えるかを検討する。 リハビリテーション開始時に年齢、性別、主病名、入院からリハビリテーション開始までの日数、栄養状態の指標(身長、体重、BMI、アルブミン、ヘモグロビン、CRP、MNA-SF、飢餓・侵襲・悪液質の有無)、栄養管理(経口摂取、経管栄養、経静脈栄養の有無、1日エネルギー摂取量、1日エネルギー必要量:基礎エネルギー消費量×活動係数で算出)、気管切開カニューレの有無、反回神経麻痺の有無、理学療法と作業療法の実施の有無、ADL(Barthel指数)、摂食嚥下障害の重症度(藤島の摂食嚥下レベル)、舌圧、握力、歩行速度を調査する。 筋肉量は言語聴覚療法開始時に近い腹部CT画像が存在する場合には、第3腰椎レベルのスライスで大腰筋の筋面積を評価して、骨格筋指数を評価する。腹部CT画像の存在の有無に関わらず下腿周囲長を計測する。筋肉量(骨格筋指数、下腿周囲長)、筋力(握力)、身体機能(歩行速度)を評価することで、全身のサルコペニアの有無を判断できる。 以上のデータより、サルコペニアの摂食嚥下障害診断フローチャートを用いて、サルコペニアの摂食嚥下障害が「除外(サルコペニアの摂食嚥下障害ではない)」「可能性あり」「可能性が高い」のいずれであるかを評価する。「可能性あり」「可能性が高い」のいずれかに該当する場合を、サルコペニアの摂食嚥下障害の有病割合として調査する。その上でサルコペニアの摂食嚥下障害と栄養状態、栄養管理、機能予後の関連を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文掲載時期が遅れ、掲載料の支払いが次年度になったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の論文掲載料として使用する。
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