研究実績の概要 |
サルコペニアの摂食嚥下障害の有病割合と予後を調べるために前向きコホート研究を行った。対象は当院リハビリテーション(リハ)科に摂食嚥下リハ依頼のあった患者108人。摂食嚥下機能は藤島の摂食嚥下レベル(FILS)で、サルコペニアの摂食嚥下障害の有無は、診断フローチャートで評価した。 男性72人、女性36人、平均年齢76歳。主な原因疾患は、脳神経疾患36%、心大血管疾患25%、呼吸器疾患14%、がん11%であった。1日エネルギー摂取量の中央値は1159kcal (25パーセンタイル648kcal)であった。FILSの中央値はリハ開始時4、退院時8であった。全身のサルコペニアは49%に、サルコペニアの摂食嚥下障害は32%に認めた。サルコペニアの摂食嚥下障害はFILS低値、下腿周囲長低値、握力低値、BMI低値、血清アルブミン低値、CRP高値と関連を認めた。年齢、性別、リハ開始時FILSで調整した順序ロジスティック回帰分析では、退院時FILSはサルコペニアの摂食嚥下障害の場合に独立して低かった。 サルコペニアの摂食嚥下障害の有病割合は摂食嚥下リハ患者の32%と高く、サルコペニアの摂食嚥下障害の場合、摂食嚥下機能の予後が悪かった。1日エネルギー摂取量が少なかったことが予後が悪い一因と考えた。 本研究結果を踏まえて、医原性サルコペニアとサルコペニアの摂食嚥下障害に対するリハ栄養という英語総説論文を執筆した(Nagano A, et al. J Nutr Health Aging 2019)。 2019年に日本サルコペニア・フレイル学会、日本摂食嚥下リハ学会、日本リハ栄養学会、日本嚥下医学会の4学会によって、「サルコペニアと摂食嚥下障害」のポジションペーパーが発表され、本研究領域に一定の発展を認めた(Fujishima I, et al. Geriatr Gerontol Int. 2019)。
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