脳卒中片麻痺上肢の離把握動作を治療する「ブレイン・マシン・インターフェース・リハビリテーション(BMIリハ)」は、 障害脳の機能正常化を誘導し、標準医療では困難とされた症例においても一定の機能回復をもたらすことが示されて来た。しかしその背後で駆動している可塑的な神経機能再構築プロセスの詳細は不明であった。初年度(28年度)には、反復的なBMIリハ中の脳波反応(運動準備電位と事象関連脱同期の経時的遷移過程)から脳内学習プロセスをモデリングすることで、BMIリハプロセスが「運動スキル獲得」であることを示した。二年度(29年度)は、BMIリハの学習過程での「報酬系を介した強化学習」の関与を検討するため、fMRI-EEG同時計測基盤を用いた実証をおこない、BMI制御に成功した場合には頭頂連合野を中心としたBOLD活性が高いことを見出した。本年度(30年度)では、fMRI-EEG同時計測を継続してBMI学習の進展に伴う頭頂連合野のBOLD活性変化の検討するとともに、運動関連脳波反応の実時間検出システムを開発し、末梢神経筋への電気刺激の送出遅延時間がBMI学習に及ぼす影響について検討することに取り組んだ。はじめに経時的なBMI学習を実施し、fMRIによる脳活動領域の変容を分析したところ、頭頂連合野のBOLD活性変化自体は保持せず、体性感覚運動野へのBOLD収斂傾向が観察された。このことから、頭頂連合野はBMIの制御自体に影響を与える因子ではあるが学習に直接関与するものではないことが示唆された。次に運動関連脳波反応の実時間検出については、Locked-Inアンプ機構による検出が時間応答性ならびに信号強度推定精度の両面で利点があることを実証的に明らかにした。一方、末梢神経筋への電気刺激の送出遅延時間がBMI学習効果に与える影響については明確な結論が現段階で得られず、検討を継続することとした。
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