研究課題/領域番号 |
16K01470
|
研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
上野 敦子 東京女子医科大学, 医学部, 准講師 (30277199)
|
研究分担者 |
冨澤 康子 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (00159047)
上塚 芳郎 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (40147418)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 植込み型補助人工心臓 / 重症心不全 / 合併症 / ドライブライン感染 / 脳血管障害 / 骨格筋 |
研究実績の概要 |
最適薬物治療でもコントロールが困難な重症心不全患者に対し,補助人工心臓植込みが徐々に普及してきている。心臓移植までの待機期間としての使用ではあるが、移植ドナーの増加は補助人工心臓植込み患者の増加を上まわり、移植待機期間はさらに延長している。植込後にADL拡大が順調にすすんでも、脳血管障害や感染などの合併が、再入院や長期入院、QOLや生命予後の悪化をもたらしている。生活習慣、生活環境、運動耐容能と合併症との関連を評価することで、患者自身の日常生活での自己管理のみならず、家族がサポートを適切に行う意識を高め、合併症を予防し医療に関わる負担削減目的として本研究を計画した。 平成28年度は補助人工心臓植込み後の合併症状況を確認するために、①これまでに植え込み型補助人工心臓を装着された症例のADL拡大の経過、動脈硬化危険因子、退院後の生活環境・サポート体制を評価し、植込み後から退院後までの、生活習慣の問題点を明らかにする、②そこから、植え込み型補助人工心臓装着患者に対する生活習慣調査表を作成する、ことを予定した。患者情報の収集から、補助人工心臓植込み患者における合併症は、植込まれたポンプと体外にあるコントローラを繋ぐドライブラインというチューブと皮膚との貫通部位の感染が最も多かった。感染が悪化し体内のポンプにまで感染すると致死的になるため、状態によっては長期入院を余儀なくされQOLの低下が問題となる。幼少児の存在な生活環境より、6分間歩行距離が長い=運動耐容能の高いほうが、貫通部感染の合併・悪化率が高いことが確認され、第22回日本心臓リハビリテーション学会で報告した。また、予後やQOL低下に大きく関与する合併症に脳血管障害があり、補助人工心臓植込み後2か月の間に発症することが多く、発症の有無に年齢以外明らかな関連因子がないが、症状等でのADLやQOLの評価、入院期間調査を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度内に、植え込み型補助人工心臓装着患者に対する生活習慣調査表を作成する計画であったが、調査表の作成が未完了である。これは、植込み型補助人工心臓装着患者の合併症の種類やその誘因を調べ、特に多い合併症であるドライブライン貫通部周囲の感染が活動量に影響することが示唆されたが、活動量を評価する調査内容および実際の活動量の評価について、検討する必要があったためである。検討した結果、活動量計の利用を行うこととした。活動量計の測定内容を反映する調査表内容を検討中である。 また、合併症の一つで予後やQOLに大きく関わる脳血管障害について、これまでの発症患者17例について、画像、障害の程度、リハビリ内容、経過について情報収集し、総合的に判断するのに時間を要している。現在、情報は収集し終え、脳血管発症患者と未発症患者についての背景の違いや運動耐容能、障害の程度、日常生活動作の獲得や退院までの期間について、リハビリテーションの役割について検討している。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度より、新たに補助人工心臓植込み術を施行された患者に対して、前向きに患者基本情報を収集するとともに、運動耐容能や骨格筋の状態評価、退院後の生活活動調査を行う計画である。また、骨格筋評価のために、近赤外線による非侵襲的組織酸素飽和度を測定する計画であるが、測定部位の筋厚により評価が異なってしまう可能性を指摘された。このため、超音波による骨格筋量(筋厚)測定を行うことで、適切な評価を行えるようにしていく。 また、補助人工心臓の植込み後の活動度や骨格筋評価、また補助人工心臓植込み効果の評価を行うにあたり、補助人工心臓植込みを施行されていない心不全患者との比較を行うことを検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は非侵襲的組織酸素飽和度測定装置であるINVOSを購入予定であった。これまでのパイロット的研究で、INVOSによって測定する骨格筋部位について指摘され、検討が必要となった。運動療法には自転車エルゴメータによる有酸素運動を行うが、この測定には大腿四頭筋の酸素飽和度を測定することが、運動形態としては適していることも考えられ、計画通り前額での測定を行うのであれば、少なくとも3チャンネルが必要となる。これにより誘導が2チャンネルのものか4チャンネルのものか購入機器が変わってくるため、その検討を行っていた。この検討期間のため、予定していた額を次年度へ繰り越すこととなった。
|
次年度使用額の使用計画 |
検討の結果、計画通り2チャンネルのものの購入を決め、平成29年度に購入予定である。
|