生産年齢(20-60歳)のくも膜下出血(SAH)後の高次脳機能障害のうち特に遂行機能障害に焦点をあてその障害の程度や経過、予後に関して非侵襲的脳機能画像法 (SPECT&NIRS)を用いて客観的に診断可能な方法論を確立し、その生体内情報をもとにニューロリハビリテーショ ン的アプローチで働き盛りのくも膜下出血患者 の障害回復を促し早期に社会復帰させることを目的とする。 平成30年度の研究計画では、急性期~慢性期SAH患者を対象に、SPECTで安静時のベースライン脳血流 測定し脳血行動態への影響をグローバルに把握し、さらに脳機能面では活動時の脳反応度合いを検出するためphonemic verbal fluency test遂行時NIRS計測を 相補的 に組み合わせ神経心理検査とともに検討した。 予想通り、SAH患者群では健常者群と比べ、語想起数が有意に少なく、phonemic verbal fluency test遂行時の前頭葉皮質oxy-Hb濃度は低下していた。しかしながら経過とともに遂行機能回復とともにSFX活動性も正常化された。 SPECTでは安静時の脳灌流の異常が脳全体に及んでいることから、作業仮説である、fronto-brainstem-cerebellar-thalamic-loopを含む神経ネットワークレベルでの障害の可能性が示唆された。くも膜下出血後の高次脳機能障害、特に遂行機能障害には前頭葉、特にSFXの活動変化がなんらかの関係性を有している可能性が示唆された。特にSFX前方成分のpre-SMA領域は両側DLPFC(背側前頭前野)と双方向性の連絡があり、研究結果より、少なくとも2つの異なる非侵襲的脳機能画像を組み合わせることの有用性が示唆された。
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