研究課題/領域番号 |
16K01473
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研究機関 | 聖隷クリストファー大学 |
研究代表者 |
大原 重洋 聖隷クリストファー大学, リハビリテーション学部, 教授 (90758260)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 聴覚障害 / 補聴器 / 乳児 / 療育 / データロギング |
研究実績の概要 |
平成29年度は、0ー1歳児27名(73.7±24.0dB:40~110dB)について、2ー6歳児19名(64.5±16.4dB:41.2~101.2dB)と比較して、補聴器の装用時間延長と関連する要因について統計学的に検討し、予測モデルを作成した。 ①中等度群では、1カ月期の装用時間は平均1.8±1.9時間と短く、12カ月期でも4.8±3.2時間と、常用に至らなかった。高度群では、1カ月期に6.2±3.7時間と既に常用しており、12カ月期で9.0±2.1時間と終日装用に至った。 ②常用に向けた家庭指導では、高度難聴の家族では中等度難聴に比べて、補聴器装用の意向が高いことが示された。中等度難聴児の家族は、装用意欲が乏しく、常用が遅れる傾向が示された。 ③0ー1歳児における1カ月期の補聴器を外す頻度(平均回数/日)は、中等度群:平均6.5±3.2回、高度群:平均5.7±3.8回であり、群間差を認めなかった。 ④12カ月期の装用時間を目的変数とし、説明変数として聴力レベル、診断時月齢、常用の家庭指導、補聴器を外す頻度の4要因を投入し重回帰分析(ステップワイズ法)を実施した。その結果、平均聴力レベル、診断時月齢、常用の家庭指導の3要因に関与を認め、補聴器を外す頻度は関与を認めなかった。3因子により構成した重回帰モデル(y=0.06x1+0.223x2+0.619x3-2.284)は統計的に有意(F(3,23)=8.6,p<0.01)であり、自由度調整済みR2値は0.49であった。パラメータ推定値について、対象児の平均聴力レベルと家族の指導実施の要因は1%水準、診断時月齢は5%水準で有意であった。0ー1歳児における補聴器の常用には、これら3因子が予測因子として有意な関連が推測された。すなわち、聴力程度が高度で、早期に診断を受け、家族の取り組み意欲が高いと装用時間が延長するといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.0ー1歳児の補聴器装用時間延長について、2歳以上の事例と比較して固有の特徴を示した。 2.平均聴力レベルと補聴器装用時間の関連を明らかにした。 3.早期の補聴器常用には、家族の装用意欲が関連しており、高度な難聴の家族ほど、装用への取り組み意欲が高いことを明らかにした。 4.採取した全データを説明変数として投入し、重回帰分析の手法を用いて、補聴器の早期常用のモデルを作成した。
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今後の研究の推進方策 |
以下の質的データについて、計量テキスト分析を行い、平成29年に得られた観察評価に基づいた結果を補完し、早期の常用を促進する家族支援モデルを構成する。 1.質的データの採取:装着の不快感の克服、装用効果の実感、家族の取り組み状況、の3つの観点から、保護者に半構造面接を実施し、常時装用に至るまでの発達的変容過程について音声資料を得る。 2.計量テキスト分析:逐語録(ナラティブデータ)を作成し、テキストデータマイニング処理を実施し(IBM SPSS Text Analytics for Surveys)、乳児期の補聴器装用を促進、あるいは、抑制する単語の出現頻度と相関、語と語の係り受け関係(構文解析)について分析し、常時装用に至るプロセスと機序を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費(データ採取、研究協議、学会)が少なく済んだため。また、当初購入を予定していた録音機器が不要となったため(大学備品を使用)。 質的データの分析を計画しており、半構造化面接で得られた音声資料のテキスト化の費用として使用する。
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