研究実績の概要 |
本研究の目的は、乳幼児における補聴器装用時間の延長の状況と発達経過を明らかにし、早期の常用を促進する家庭支援モデルを構成することである。平成30年度は、0ー1歳児の装用時間に関与する要因について、2ー3歳児、4ー6歳児の聴力程度別群の結果と比較して統計的に検討した。さらに、家庭指導プログラムへの取り組み(常用の家庭指導)状況について、逐語録を分析して明らかにした。 【実態調査】主調査では、聴力程度別2群(軽中等度、高度)について、診断時年齢×観測時期2水準(1カ月、12カ月)の二元配置分散分析を用いた。年齢要因は、中等度群3水準(0ー1歳、2ー3歳、4ー6歳)とした。聴力程度(F(1,50)=29.6, P<0.01)と観測時期(F(1,50)=13.0, P<0.01)の要因の主効果は共に有意であり、装用時間へ関与する要因と考えられた。そこで、聴力程度要因の関与を踏まえて、聴力程度群ごとに常用の家庭指導の逐語録の解析を行なった。 【逐語録】取り組み頻度(軽中等度群/高度群)は、常用支援2項目(2.遊び相手になり気を紛らわせる(23.3%/64.2%)、3.補聴器を外したら付け直す(23.3%/64.2%))、4.聴性行動(音に気付かせる)(7.6%/57.1%)、5.音声認識(話声を認識させる)(38.4%/50.0%)、6.話者注目(話し手の口形に注目させる)(23.3%/64.2%)、8.家庭指導(父親に約1時間相手をしてもらう)(7.6%/50.0%)について、高度群での取り組みを半数以上に認めた。高度群の実施者数は、軽中等群より多く、差は統計的に有意であった。0ー1歳軽中等度群では、高度難聴児と比べ、早期補聴器装用に関する家庭指導の意欲が乏しく、一貫した療育指導と補聴器の常時装用に向けた、家族の装用意欲維持に関する支援の重要性が示唆された。
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