研究課題
摂食嚥下障害の大きな原因である舌骨挙上障害に対して行われる電気刺激療法は皮膚の疼痛を生じ,また,電極を皮膚に密着させることが困難などの面から臨床場面での普及は難しかった.磁気刺激は皮膚に存在する侵害受容器を刺激せず刺激コイルを皮膚に密着させる必要がないために電気刺激の代用になり得るが,これまではコイルが大きすぎることから舌骨を挙上させる舌骨上筋の刺激は困難であった.われわれは,舌骨上筋を選択的に磁気刺激可能なコイルを開発し,特許申請を行った.最終年度には,舌骨上筋の強化法としてエビデンスのある頭部挙上訓練法と磁気刺激を用いた舌骨上筋強化訓練の無作為化比較試験を健常成人男性24名に対して週5回2週間行い,その効果を比較した.磁気刺激群の刺激は1回2秒間,1日90回施行した.その結果,2週間後には磁気刺激群では舌骨上筋筋力が有意に増大し,頭部挙上訓練群では増大傾向はみられたものの,有意な増加までは得られなかった.頭部挙上訓練法は通常6週間行われるため,2週間では十分な効果は得られなかったためと考えられた.したがって,舌骨上筋磁気刺激は舌骨上筋の強化法として短期的に効果が得られる新たな治療法として使用可能と考えられた.また,実際に摂食嚥下障害患者に対しても磁気刺激を行い,舌骨上筋強化と筋疲労の改善結果も得られた.研究期間全体の成果としては,舌骨上筋を選択的に磁気刺激可能なコイルを開発して疼痛なく舌骨上筋の刺激を行うことができ,新たな舌骨上筋筋力強化法も確立することができた.
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Neuromodulation
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10.1111/ner.12777