研究実績の概要 |
High-resolution impedance manometry(HRIM)を用いることで,従来のHigh-resolution manometry(HRM)による咽頭・食道内圧測定に加え、食塊通過・残留が推定できることが最近の研究で示唆されている. Omariら(2011)は,誤嚥リスクの指標としてBolus presence time(BPT),Hypopharyngeal peak pressure(PeakP),Intra-bolus distension pressure(IBP), Distension to peak contraction(DCL)の要素から計算されるSwallow risk index(SRI)を提唱した.液体で施行しSRI 0-15をNormal,15以上をAspiration riskとした.今回、重度嚥下障害患者に嚥下造影検査(VF)とHRIMを同時施行した.液体もしくはとろみ付き液体5ccを命令嚥下してもらいBPT,PeakP,IBP,DCLを計測し,SRIを算出した.VF結果よりpenetration-aspiration scale(PAS)4以上を誤嚥あり群,3以下を誤嚥なし群とし,SRIを比較検討した.これまでに解析可能であった11名(23施行, 69±11歳)を対象に予備的解析を行った.統計解析には,対応のないt検定を用いた.SRIは誤嚥あり群20.0±23.4,誤嚥なし群3.4±5.2で誤嚥あり群の方が有意に高かった.しかしBPT, IBP, PeakP, DCLの4つの個別値では有意差を認めなかった.BPT, IBP, PeakP, DCL単独では誤嚥の予測に有用とはいえないが、個別値を組み合わせてSRIを導くことで誤嚥リスクを推定できることが示唆された.HRIMを用いることで、画像検査を行わずに誤嚥リスクを予測する手段になりうると考えられた.
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