研究課題/領域番号 |
16K01481
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研究機関 | 星城大学 |
研究代表者 |
山田 和政 星城大学, リハビリテーション学部, 教授 (20367866)
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研究分担者 |
古川 公宣 星城大学, リハビリテーション学部, 教授 (30460629)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 転倒予防 / 視覚情報 / 眼球運動 / 前頭葉機能 / NIRS |
研究実績の概要 |
本研究では,歩行時に環境状況の把握に必要な視覚情報と高齢者が早期から低下する前頭葉機能との関連を調査し,高齢者および老年期に発症しやすい疾病(脳卒中・転倒による大腿骨近位部骨折など)を抱えた患者の転倒リスクにおけるメカニズムの解明と転倒予防に向けた介入プログラムの構築を目的としている. 地域在住の健常高齢女性を対象に,昨年度は疑似歩行である「足踏み」と「計算」の2つの課題を用いてデータ収集したが,今年度は実際の「歩行」と「計算」の2つの課題を用いてデータ収集した.結果,眼球の動きは,二重課題歩行(計算しながらの歩行)時が単一課題歩行(歩行のみ)時および強制注視させての歩行(意識的に前方を見るよう指示しながらの歩行)時と比較して大きかった.歩行速度は,二重課題歩行時が単一課題歩行時と比較して遅く,歩幅は,二重課題歩行時が単一課題歩行時と比較して狭かった.実歩行においても足踏みと同様な結果であることを確認した. 脳出血後に左側の半側空間無視(USN)をきたし,机上検査上のUSN症状は消失したものの日常生活場面において見守りが外せない患者の視線の動きをデータ収集した.結果,Peripersonal spaceでは水平線分の中点を見るよう指示すると左側に視線を向ける探索を認めたが,Extrapersonal spaceでは水平線分の中点を見るよう指示しても中央線を越えた左側への探索を認めなかった.Extrapersonal spaceにおいて水平線分の左端を注視するよう促すことで視線の右方偏位が減少した.歩行はExtrapersonal spaceで行われる動作であり,USN患者では左側に視線が向けられず,転倒の危険性が高いことが確認され,左側に注意を向けさせる手段のひとつとして,前方視界の左端を注視するよう口頭指示で促すといった言語性方略が有用であることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健常高齢女性を対象とした実際の「歩行」と「計算」の2つの課題を用いた二重課題歩行時のデータ収集・分析によって,高齢者の“ながら歩行”時における転倒リスクのメカニズムを解明することができ,平成29年度の研究は進展した.また,今年度に計画していた老年期に発症しやすい疾病をもつ患者の二次的転倒リスクにおけるメカニズムの解明については,複数データを収集することはできなかったが,脳卒中による高次脳機能障害をきたした症例について検討することができた.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,老年期に受傷・発症しやすい疾患(脳卒中,転倒による大腿骨近位部骨折,認知症)を有する患者のデータ収集・分析を行う.尚,疾患別データは対象患者が限定されるため,多施設間でのデータ収集を計画しているが,症例数が少ない場合は一症例ごとに検討する.
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