研究課題
今日のがん治療においては、免疫療法とくに免疫チェックポイント阻害剤の有効性が注目されている。そこで、本研究では、がん組織 に浸潤したTリンパ球上のPD-1,およびがん組織上のPD-L1の発現に及ぼすハイパーサーミア(温熱療法)の影響を検討することを目的 としている。平成30年度も引き続きがん組織上のPD-L1に及ぼすハイパーサーミア(温熱療法)の影響をin vitroで検討した 。この検討は、もしもハイパーサーミア(温熱療法)により、がん細胞上のPD-L1の発現を負に制御できれば、高価な免疫チェックポイン ト阻害剤の使用量や投与間隔を減じることができる可能性があるのでその意義が高いと考えている。これまでに実施した研究結果によると、各種 がん細胞に自然に発現しているPD-L1は少量のため、IFNgannmaで刺激してPD-L1の発現亢進を惹起させたうえで、ハイパーサーミア( 温熱療法)の発現抑制効果を検討した。その結果、がん細胞膜上のPD-L1の発現はハイパーサーミア(温熱療法)施行後有意に低下し た(FACSでの検討)RT-PCRでの検討によるとPD-L1の細胞内での合成がハイパーサーミア(温熱療法)により抑制されていることが明らかとなった。ただ、研究に用いてきたがん細胞株により、 温熱処理によるPD-L1の発現抑制作用がまちまちであり、今後のさらなる検討を要すると考えられる。
3: やや遅れている
各種 がん細胞に自然に発現しているPD-L1は少量のため、IFNgannmaで刺激してPD-L1の発現亢進を惹起させたうえで、ハイパーサーミア( 温熱療法)の発現抑制効果を検討した。その結果、実験に使用するがん細胞株を増やして検討していくと、がん細胞膜上のPD-L1の発現が温熱処理で抑制傾向にはあるががん細胞株によってばらつきが大きく発現抑制のメカニズムの検討までは進めることができていない。
がん細胞膜上のPD-L1の発現が温熱処理により再現性が高くもっとも強く抑制されたがん細胞株数種類を選択し、その発現抑制メカニズムを遺伝子レベル、転写・翻訳レベル、分子レベルで検討していく。
本年度に複数のがん細胞株でPD-L1の発現に対するハイパーサーミア(温熱処理)の影響を検討したが、用いたがん細胞株によって、温熱処理によるPD-L1の発現抑制効果の程度にばらつきを認めたため、その抑制作用のメカニズムの検討まで行うことができなかった。そのため、予定していた研究費が未使用となった。次期年度には、これまで検討した細胞株のうちPD-L1の発現抑制効果を強く認めた数種類のがん細胞株に絞って、温熱処理によるPD-L1の発現抑制のメカニズムを遺伝子発現レベル、転写/翻訳レベル、細胞内移動作用レベルで検討する予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 6件)
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