研究課題/領域番号 |
16K01491
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研究機関 | 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
石原 眞澄 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 老年社会科学研究部, 研究員 (70759597)
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研究分担者 |
櫻井 孝 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, もの忘れセンター, センター長 (50335444)
荒井 秀典 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 病院, 副院長 (60232021)
斎藤 民 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 老年社会科学研究部, 室長 (80323608)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 認知症予防 / うつ予防 / 写真療法 / マインドフルネス / ポジティブ心理学 / 気分改善プログラム / グループディスカッション / 自己肯定力 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、高齢者の認知症対策として、科学的根拠に基づいた気分の改善による認知症予防のための対話型写真鑑賞プログラムの開発および効果検証、ポジティブな質問項目によるwell-being尺度の開発である。研究は、3年間の実施を予定し次の通り計画した。 【28年度】研究①:1.文献レビュー、2.写真鑑賞プログラムの開発、パイロットスタディによる実施可能性の検討、心理的well-beingの尺度開発のための先行研究のレビュー、【29年度】研究②:軽度認知機能低下およびうつ傾向のある高齢者を対象にした無作為比較試験による開発プログラムの効果を検証、心理的well-beingの尺度開発のための認知症患者へのインタビュー調査、項目群の検討及びプレテストの実施、【30年度】研究③:軽度認知症患者を対象に1.心理的well-beingの尺度開発における本テストの実施、2.開発プログラムと開発尺度を用いた無作為比較試験による効果検証を行う。 初年度にあたる28年度は、準備段階として以下の研究に着手した。 1. 文献レビュー:写真撮影におけるマインドフルネスによる注意コントロールの強化、肯定的なグループディスカッションの心理効果などの文献を調査しプログラムの心理効果の根拠となるモデルを抽出することができた。2. 対話型写真鑑賞プログラムの開発:文献レビューにより抽出した心理改善となる要素を整理し、プログラムを構成した。3.パイロットスタディ:軽度認知機能低下およびうつ傾向のある高齢者を対象にしたパイロットスタディを実施し、プログラムの実施が可能であることを確認することができた。4.心理的well-beingの尺度開発のための先行研究のレビューを行うことができた。 28年度の業績は、調査結果などから論文および学会において発表し協力研究者と共に社会にフィードバックすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
28年度に計画した1.文献レビュー、2.楽しみながら注意力・表現力・肯定力を強化するグループディスカッションによる写真鑑賞プログラムの開発、予備実験による実施可能性の検討は当初の予定通り完了した。また、パイロットスタディにおいてプログラムの実施可能性も示され、この結果に基づき29年度実施予定の軽度認知機能低下およびうつ傾向のある者を含んだ高齢者を対象にした無作為比較試験への準備も順調に進み、すでに実施を開始していることから、「当初の計画以上に進展している」といえる。 文献レビューを行うことで、グループによる写真の撮影・鑑賞・ディスカッションが、さまざまな心理効果がみられるモデルと符合することを明らかにした。この結果に基づき、気分改善効果が予測されるプログラムの開発を行うことができた。また、パイロットスタディでは、高齢者を対象にしたプログラムの実施可能性の検討を行い、開発プログラムが軽度認知機能低下やうつ傾向のある高齢者でも、カメラ操作をはじめ、撮影、鑑賞、ディスカッションを楽しんで行うことができることを確認することができた。また、実施前後に行った心理調査の解析を行った結果、プログラム後に気分(K6)および健康に関連する生活の質(SF8)の改善が示された。この結果に基づき、現在、軽度認知機能低下およびうつ傾向のある者を含んだ高齢者を対象に無作為比較試験の実施中である。 以上から得られた研究成果は、論文・学会発表などで合計4本を発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2年目となる29年度は、28年度に得られたパイロットスタディの結果に基づき、軽度認知機能低下高齢者を含む抑うつ傾向のある高齢者を対象に、うつ予防、認知症予防を目的とした開発プログラムによる無作為比較試験の実施を5月より開始しており、引き続き計画通り進めていく。また、心理的well-beingの尺度開発のための認知症患者へのインタビュー調査、項目群の検討及びプレテストを実施する。開発プログラムによる無作為比較試験の検証が終了し次第、心理および認知機能に関する検査の解析を行い、得られたデータから論文化を進め、研究成果を国内外の学会発表・学術雑誌への投稿を行うとともに、講演や実践などで社会にフィードバックしていく。 30年度は、心理的well-beingの開発尺度おける本テストを実施し、信頼性の検討を行う。また、開発プログラムを,軽度認知症患者用に調整し、軽度認知症患者を対象とした臨床介入を実施する。そのために、軽度認知症患者用に対応したプログラムの調整とともに、プロトコルを作成し、軽度認知症患者における開発プログラムの実施可能性に関する検討を行う。予備検査の結果に基づき、軽度認知症患者への開発プログラムの臨床介入を実施する。検査前後に、開発した心理的well-being尺度による検査および認知機能検査を実施する。検証が終了し次第、心理および認知機能に関する検査の解析を行い、得られたデータから論文化を進め、研究成果を国内外の学会発表・学術雑誌への投稿を行うとともに、講演や実践などで社会にフィードバックしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
28年度に予定した臨床心理士による認知機能検査を、NCGG-FATによるタブレット式検査に変更したため、臨床心理士の人件費がなくなり、予定していた費用より低く抑えることができた。また、遠方(岐阜・京都)に予定していた実験実施施設も、実施施設の理由でキャンセルになり、所属機関(愛知県大府市)近隣で実施することとなったため、交通費も予定していた費用より低く抑えることができた。
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次年度使用額の使用計画 |
29年度実施予定の臨床に備えた研究の実施をはじめているが、この研究が終わり次第、軽度認知機能障害の高齢者を対象に臨床研究を実施していく予定であり、対象人数が増える事が予測される。その際の認知機能検査には、臨床心理士が必要となるため、その人件費および交通費に充てる予定である。
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