研究課題/領域番号 |
16K01504
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
四本 かやの 神戸大学, 保健学研究科, 准教授 (10294232)
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研究分担者 |
橋本 健志 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (60294229)
渡部 貴史 神戸大学, 保健学研究科, 助教 (80758847)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 作業療法 / 心理社会療法 / 社会参加 / 精神科外来 |
研究実績の概要 |
28年度は、①倫理委員会審査の受審、②学会参加および文献検索等における関連情報の収集を行い、プロトタイプモデルを完成した。さらに③共同研究者・研究協力者との打ち合わせ、④対象者の選定を行いリクルート後介入を開始した。 情報収集については、神戸大学附属図書館の検索端末を使用し、医中誌Web・PsycINFO・PubMed等のデータベースを検索し、情報収集を実施した。診療所外来および地域活動支援センターなど福祉領域における取組の学会報告は散見されるものの、その効果的方策は未だ確立しておらず、日本精神神経科診療所協会等で問題提起されている。 さらに引きこもり対策は各地で取り組まれているにも関わらず未だ52万人が存在し、時に暴力的な手法等商業的アプローチが人権問題などを引き起こしているため、引きこもり症例の中でも精神神経科診療所等の受診の必要な者に対するリハビリテーション手法の早期確立が必要である。また学会での意見交換によって、診療所附設型デイケアの中にも本研究の対象者と類似した傾向のある者が存在すること、その対応は従来のリハビリテ―ション手法とは異なると考えられ、新たな社会参加に焦点化したリハビリテーション手法の開発の意義は大きいと考える。 以上の情報収集及び共同研究者・大学院生らとの討議の結果、介入のプロトタイプを完成した。その一部を「長期間社会参加状態の回復しない診療所受診患者に対する作業療法(四本かやの、2016年9月、第50回日本作業療法学会)」として報告した。 共同研究者との打ち合わせにより、本研究の適格条件を満たす対象者の受診頻度が低いことが明らかとなった。本研究の目標とする社会参加の水準を改善するためには、対象者が受診以外の時間帯にどのような社会参加状態にあるかの評価が必要であると思われ、さらに評価ツールを加える必要があるかどうか検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
28年度は①倫理委員会審査の受審および承認、②学会参加および文献検索等における関連情報の収集し、介入プロトタイプモデルを完成させた。さらに③評価に必要な書籍、検査用紙、マニュアル、PC等の購入。④共同研究者・研究協力者との打ち合わせ、⑤対象者選定などの準備を中心に行い、一部パイロットにて介入を開始した。 神戸大学大学院保健学研究科保健学倫理審査委員会における審査のための書類を準備し、受審し、承認を受けた。受審に当たっては、タイトルの“外来ニート”という呼称が研究対象者らに対して好ましくない影響を与えるという点が指摘され、数回の受審が必要であった。外来ニートとは、“65歳未満で、最近6か月以上にわたって就労・就学していない、休職・休学中でない、デイケアや作業所に通所していない、主な家事を担当していないなどの項目すべてを満たす状態(平川博文、2010)”と定義されており、本研究では、休職を繰り返すケースなども対象に含み社会参加状態が悪化したままの者を対象としているため、研究対象者への説明書などの文言を「社会参加が十分でない」と中立的表現に修正して承認を得た。倫理審査承認以降、対象者の募集・選定に向け、研究分担者および研究協力者と会議を月1回計3回持った。すなわち、参入基準を満たす診療所の患者を選定するため、研究分担者である精神科医らと対象者選定の条件を確認し、可能である場合には対象者への依頼を開始した。しかし本研究の適格条件を満たす対象者の受診頻度が低く、研究参加の説明などの機会を得るまでに時間を要している。 第50回日本作業療法学会および第21回日本デイケア学会に参加し、一部の成果について報告・討議し、情報収集、意見交換を行った。特に診療所や総合病院等で勤務する専門職、研究職との情報交換により実際には症状が安定しても就労できない外来受診患者が多数存在していることを確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
①倫理委員会受審・承認が遅れたため、研究対象者リクルートが遅れている。 引き続き定期的に研究代表者が個別介入を実施している施設に関連する診療所勤務の精神科医らと定期的に研究打ち合わせ会合をもち、対象者数の増加に向けリクルートを継続する。さらに対象者数の不足に対しては、神戸大学病院精神科受診者、その他精神科診療所受診者などの候補を研究分担者から紹介を受ける予定である。 ②介入前・介入後の評価者として、研究分担者だけを当てるのではなく、神戸大学大学院保健学研究科リハビリテ―ション科学領域の大学院生のうち作業療法士免許を有する者などを雇用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
介入モデルプロトタイプの作成のための書籍や文献複写などの諸費用、および大学院生・リサーチアシスタントなどの雇用がなかったこと、倫理審査承認が遅れたため研究にかかわるスタッフの打ち合わせ会合の開催回数が少なかったことによる。 さらに購入予定であった介入用の材料等の購入が遅れていることによる。
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次年度使用額の使用計画 |
29年度には、研究対象者の増加が見込まれるため、研究分担者・研究協力者、さらには大学院生やリサーチアシスタントの雇用などの人件費、旅費等が増加する。 また介入数の増加により、介入に必要な作業療法に必要な物品や文具等の購入が増加する予定である。
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