研究課題/領域番号 |
16K01505
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
藤田 直人 広島大学, 医歯薬保健学研究科(保), 講師 (90584178)
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研究分担者 |
藤野 英己 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (20278998)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 2型糖尿病 / 高気圧処置 / 高血糖症 / 高インスリン血症 / 骨格筋 |
研究実績の概要 |
肥満を伴う2型糖尿病モデル動物であるOLETFラットを用いて、1.3気圧の高気圧処置が2型糖尿病の病態に及ぼす影響を検証した。OLETFラットに高血糖症と高インスリン血症、及び高FFA血症と高トリアシルグリセロール血症が確認できるようになる24週齢の時点から高気圧処置を開始し、1日8時間、週に5日の頻度で、40週齢まで実施した。1.3気圧の高気圧処置を行うことにより、非処置の場合と比較して、高血糖症と高インスリン血症の進行は有意に軽減された。一方、高FFA血症、高トリアシルグリセロール血症、脂肪肝など、肥満と関連する因子に対する高気圧処置の効果は確認できなかった。 また、1.3気圧の高気圧処置が高血糖症、及び高インスリン血症を軽減する機序を確認するため、高気圧処置実施中の骨格筋における血液動態を、NIRSを用いて確認した。その結果、高気圧処置中は総ヘモグロビン量、酸素化ヘモグロビン量、及び組織中の酸素分圧が上昇することを確認した。このことより、1.3気圧の高気圧処置は2型糖尿病の糖代謝に対する有効な受動的物理的刺激であり、その作用機序には骨格筋における血流量の増加や酸素化が関与している可能性が示された。 今回の研究では高気圧処置の肥満に対する有効性は確認できなかったが、高血糖症が改善し、高インスリン血症も軽減したことから、高気圧への介入時間や介入期間を延長すれば、糖取り込み量の減少に引き続く脂質蓄積量の減少に至る可能性がある。よって、介入期間など、研究デザインの変更を検討して脂質代謝を再検証する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高気圧処置が2型糖尿病の糖代謝を促進すること、及びその作用機序の一部を確認したことで、本研究の着眼点である受動的な物理的刺激の絞り込みに目処がたったため、進行は概ね順調であると考える。今後、運動と高気圧処置の組み合わせなど、物理的刺激を加えることによる相乗効果を確認する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2型糖尿病の各病期における効果の違いを検証する予定である。OLETFラットの24週齢から高気圧処置を開始した場合の有効性が確認されており、これは初期の糖尿病の進行を抑制する作用を示唆している。しかし、2型糖尿病は進行に伴って骨格筋の栄養血管に拡張障害が生じるため、骨格筋における血流量の増加を作用機序の主と考えた場合、更なる進行期には同等の効果が得られない可能性がある。よって、今後は、各病期における骨格筋(栄養血管を含む)の病態の違い、及び高気圧処置の効果の違いを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額がわずかに発生したが、多額ではなく、研究費はほぼ予定通りに使用している。また、次年度使用額は試薬等の研究消耗品の購入に使用する予定である。
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