研究課題/領域番号 |
16K01506
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
花岡 秀明 広島大学, 医歯薬保健学研究院(保), 教授 (10381419)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 高齢者 / 回想法 / 認知症予防 |
研究実績の概要 |
我が国は、超高齢社会を迎えており、要介護者の増加、特に認知症高齢者の増加が懸念されている。認知症高齢者の増加が予想されている状況に対して、効果的な認知症予防介入の方法が求められている。こうした課題に対して、現在、心理・社会的アプローチの一つとして、回想法が地域在住高齢者に対して試みられているものの、介入効果について十分な検討が行われおらず、より実効性のある回想法プログラムを構築することが期待されている。 本研究の目的は、申請者らが先行研究で行った嗅覚刺激を用いた回想法プログラムを基に、嗅覚刺激の選択方法、種類について更なる検討を加え、新たな認知症予防に対して効果的な嗅覚刺激を用いた回想法プログラムを開発することにある。つまり、新たなプログラムの精神的健康および認知機能に対する有用性を検証し、認知症予防に役立つ実効性のある回想法プログラムを構築することにある。 28年度は、高齢者の回想を促すための適切な嗅覚刺激について検討を実施するために、文献検討に加え、欧州の回想法センターとの情報交換を行った。文献検討では、嗅覚刺激が対象者の記憶を促すだけでなく、情動にも働きかける可能性があることが報告されていた。また、回想と関連のある嗅覚刺激は、各個人で異なる場合と、比較的共通している場合の両側面あることが課題として挙げられた。欧州の回想法センターでは、様々な文化や人種の背景を持った対象者に回想法を実践することがあり、各個人の回想を促すためには、対象者の背景を考慮した回想刺激の提供が必要であることが考えられた。こうした検討を通して、地域在住高齢者を対象とした調査シートを作成し、対象者へ調査の依頼を行い、平成28年度末までに98名の回答を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成28年度では、文献検討に加え、欧州の回想法センターとの情報交換を行い、情報を整理した上で、地域在住高齢者を対象とした回想刺激に関する横断調査を行い、各テーマごとに利用可能な数種類の回想刺激を抽出し、新たな嗅覚刺激を用いた回想法プログラム案を作成するとしていた。しかし、28年度において横断調査を全て終えることができず、新しいプログラムの作成に至っていないため、遅れていると回答した。 その1つの理由として、先行研究による検討に加え、欧州の回想法センターからの情報収集を行ったが、両者をまとめ、調査用紙を作成することに時間を要してしまったことが挙げられる。二つ目の理由としては、調査用紙への協力を関係機関へ依頼したが、協力機会の選出や協力依頼に時間を要したことが遅れに繋がった。 現在も、引き続き、横断調査のデータ収集を行っており、今後は、早急にデータの解析を行い、解析結果を反映した新たな回想法プログラムを作成する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年から30年度にかけては、現在行っている横断調査の結果と基に、解析と結果の解釈を行った上で、これまで以上に適切な嗅覚刺激を抽出し、新たな回想法プログラムを作成する予定である。そして、地域在住高齢者を対象として、精神的健康および認知機能を主なアウトカムとし、その効果を検討することを目指している。 現在、平成28年度予定の遅れが生じていることから、今後は予定されている介入の実施が円滑に実施できるよう、関係機関等へ協力依頼をはじめ、新たな回想法プログラムを作成した時点から、早急に効果検討が実施できるよう、準備を整え、今年度の遅れを取り戻す予定である。
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