研究課題/領域番号 |
16K01507
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
田中 貴子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 助教 (00612409)
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研究分担者 |
神津 玲 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 教授 (80423622)
矢野 雄大 長崎大学, 病院(医学系), 技術職員 (10771389)
西中川 剛 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 客員研究員 (70771385)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 呼吸介助手技 / 慢性閉塞性肺疾患患者 / 肺気量分画 / 呼吸困難 / 呼吸補助筋 / 酸素動態 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,中等症以上の慢性閉塞性肺疾患患者を対象に患者の呼吸に合わせて呼気を介助する呼吸介助手技の換気や呼吸困難における作用機序ならびに生理学的反応を明らかにし,呼吸介助手技が呼吸リハビリテーションの治療戦略の一助となり得るか、その可能性について検証することである。 対象は,慢性閉塞性肺疾患患者16例,健常高齢者2例。対象に対して,呼吸介助施行前に肺器量分画,呼吸困難の程度,酸素飽和度,呼吸数を測定した。また,胸鎖乳突筋にと対照筋として前脛骨筋に近赤外分光装置を装着し,呼吸介助前・施行中(10分間)・後に酸化ヘモグロビン等の連続測定を行った。呼吸介助終了後には,再度肺気量分画,呼吸困難の程度,酸素飽和度,呼吸数を測定した。 結果,慢性閉塞性肺疾患患者において,予備呼気量が0.76Lから0.64Lへ減少し,一回換気量が0.73Lから0.84L,予備吸気量が0.53Lから0.60Lへ有意に増大した。また,呼吸補助筋の酸化ヘモグロビンはΔ1.4μMからΔ2.1μMへ有意に増大した。前脛骨筋においても,酸化ヘモグロビンが有意に増加した。さらに,呼吸困難の程度もmodified Borg scaleを用い,平均で2.5から1.5へ有意に減少した。酸素飽和度は,平均で95.8%から96.9%へ有意に増加した。健常高齢者においては,n数が少ないため統計処理が不可能であるが,各測定値の大きな変化は認められていない。 以上のことから,慢性閉塞性肺疾患患者に対する呼吸介助手技は,換気や呼吸困難,ならびに努力性呼吸の抑制などの効果がもたらされることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
3施設の慢性閉塞性肺疾患患者を対象に予定していたが,長崎大学病院が急性期病院であり対象のリクルートが困難であること,またもう1施設が研究の承諾は得られているが,現場のスタッフが多忙であり,本研究に時間を割いて頂くことが難しく,測定者数が予定よりも少なくなっている。
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今後の研究の推進方策 |
現在,測定が実施できている施設で対象者をリクルートする。 引き続き,研究協力施設には,可能な範囲で早急に協力して頂くよう声掛けする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に近赤外分光装置を購入予定であったが,この装置の選定に約1年の時間を要した。そのため,研究が1年遅れてスタートしている。 また,平成29年度に近赤外分光装置を購入し,データ収集に努めたが,長崎大学病院での対象者のリクルートが困難であること,他の施設でも業務が多忙で本研究に時間を割いて頂く事が難しく,研究に遅れが生じており,次年度使用額が発生している。 次年度には,昨年度予定していた「呼吸介助の運動耐容能検査に及ぼす即時効果」について,調査を遂行し,その結果をまとめ,学会発表の際の旅費や論文作成のための校閲費,投稿料に支出予定である。
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