研究課題/領域番号 |
16K01510
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研究機関 | 青森県立保健大学 |
研究代表者 |
神成 一哉 青森県立保健大学, 健康科学部, 教授 (20241466)
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研究分担者 |
黒沢 忠輝 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (40259792)
岩月 宏泰 青森県立保健大学, 健康科学部, 教授 (50184891)
尾崎 勇 青森県立保健大学, 健康科学部, 教授 (90241463)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | パーキンソン病 / 姿勢反射障害 / プルテスト / 定量化 / 表面筋電図 |
研究実績の概要 |
目的:パーキンソン病の主要症状の一つである姿勢反射障害に対する定量的測定法は開発されておらず,その病態生理解明も十分ではない。今年度の研究は,通常臨床的に用いられている姿勢反射障害の判定方法であるプルテストを模した方法で姿勢反射障害の定量方法を開発し,その際の下肢筋活動を筋電図で観察して姿勢反射障害の病態生理を解明することである。 方法:パーキンソン病患者8名とコントロールの健常高齢者6名を被験者とした。立位の被験者の上半身背部に紐を装着し,その紐を滑車に通して先端につなげた重錘を30㎝の高さから落として後方への外乱負荷を与え,ステッピング(後方へ一歩踏み出す)反応が生じる最小重量(最小ステッピング重量)を測定し,同時にその際の左右の前脛骨筋とヒラメ筋から表面筋電図を記録し,解析した。 結果:最小ステッピング重量はパーキンソン病群で1.7±0.8 kg,コントロール群で1.8±0.7 ㎏で有意差はみられなかった。しかし前脛骨筋の筋活動開始時間はパーキンソン病群で平均142ミリ秒体動開始よりも早く,一方コントロール群では174ミリ秒体動よりも遅く生じた。パーキンソン病群において,最小ステッピング重量とプルテストの定性的評価に有意の相関は認められなかった。 考察と結論:パーキンソン病患者においても我々の考案した方法で姿勢反射障害の定量的測定が可能であった。姿勢応答時の前脛骨筋の活動タイミングが健常高齢者とパーキンソン病で異なっていたことから,パーキンソン病では姿勢応答時の筋活動の様式が正常と異なる方法で行われていることが示唆された。最小ステッピング重量がパーキンソン病群とコントロール群で有意差がなく,またプルテストの定性的評価とも相関がなかった理由については,対象としたパーキンソン病患者の姿勢反射障害の程度が比較的軽度であったための可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
姿勢反射障害定量装置の開発は進めることができたが,被験者となる十分な数のパーキンソン病患者数を確保することができなかった。また,現在行っている下腿筋群の表面筋電図計測のみでは姿勢応答時の全身的筋活動の変化を知るには不十分であることがわかってきたことから,さらに大腿や体幹などへも筋電図測定部位を増やしてあらたに研究をしていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
対象となるパーキンソン病患者の重症度のバラエティーを増やし,様々な進行度の患者を対象とすることで,姿勢反射障害の定性的評価と定量評価との相関がみられるようになると期待している。 また姿勢応答に関わる筋活動を広い範囲でみるために,筋電図を大腿および体幹部においても測定することで,姿勢応答時の筋活動がどのような順番で生じているのか,健常者とパーキンソン病患者で異なるのかを調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 1.筋電図の計測と使用に必要な機材類が今年度の研究に必要な分揃っていて,新たに購入する必要がが少なかった。2.被験者となるパーキンソン病患者および健常高齢者の確保が困難で,想定よりも少人数で研究することになったため,謝礼金額が少なかった。3.自動ロッキングチェアの改良を行う時間的余裕がなく,それを用いた研究が行われなかった。 (使用計画) 1.姿勢応答時の大腿や体幹の動きを観察するために筋電センサーを数台新たに追加購入する。2.被験者となるパーキンソン病患者および健常高齢者を一定数確保する。3.自動ロッキングチェアの改良を本格的に行い,自動ロッキングチェアを使った実験を行う。
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