研究課題/領域番号 |
16K01514
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研究機関 | 北海道文教大学 |
研究代表者 |
渡辺 明日香 北海道文教大学, 人間科学部, 教授 (90281831)
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研究分担者 |
後藤 守 北海道文教大学, 人間科学部, 教授 (00002478)
木村 一志 北海道文教大学, 人間科学部, 教授 (20314180)
川端 愛子 北海道文教大学, 人間科学部, 講師 (60584034)
奥村 宣久 北海道文教大学, 人間科学部, 准教授 (80515833)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 集団ダンスセラピー / 地域高齢者 / ストレス軽減 / 健康促進 / ダンスセラピスト / 指導力 / チェックリスト / 養成カリキュラム |
研究実績の概要 |
集団ダンスムーブメントセラピー(DMT)はストレス軽減に役立ち、心身に包括的な健康促進効果をもたらす安全で心地よい優れた身体活動(作業)であり、虚弱な高齢者も参加できる。DMTを地域高齢者の健康促進活動として普及するためには、質の高いダンスセラピスト(DTh)の養成が急務である。本研究は地域での健康促進活動を志向する作業療法士(その他の医療福祉教育専門職)に養成講座を受講させ、地域在住高齢者にDMTを指導できるDThとして育成するためのカリキュラムと「DTh指導力チェックリスト」(地域高齢者DMT用)を作成することを目的としている。チェックリストはDTh指導力の現状や改善を簡便に評価し、作成したカリキュラムの有効性の検討に有用である。 H28年度は、チェックリスト試作版作成に必要な文献資料の収集・整理や研修参加を行い、DTh養成講座カリキュラムの大まかな構想を考案した。また、DTh指導力チェックリストの観察可能な下位項目A・B設定に当たり、特に下位項目Bの設定のために必要な既存のDMTビデオ画像(高齢女性対象、対照群に比し心身に有意なストレス改善効果あり)の分析に使用する機器PF-NOTEの設定と分析方法を決定した。この他、補足データとしての高齢者対象のDMT画像(2回分)を新たに撮影するための準備(倫理委員会への申請と承諾、ベテランDThの確保のための交渉、関連機関との連絡調整など)を行った。 なお、チェックリストの下位項目は、A:1)気分改善・ストレス軽減に働きかける能力、2)生活体力向上に向けたセッション構成力、B:3)参加者との身心を用いた相互交流能力、4)集団関係育成力、5)その他の能力である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
地域高齢者用ダンスセラピスト(DTh)指導力チェックリスト下位項目Bの設定のために、既存のDMTビデオ画像の分析が必要である。そのために使用する機器PF-NOTEが、業者の都合によりバージョンアップしており、計画していた設定では全く動作しない状況となった。業者のコネクタ納品は古いバージョン用であり新バージョン用のコネクタ準備に時間を要した。新バージョンPF-NOTEでビデオ解析するための様々な設定を繰り返し試行し、解析可能な方法を見出すのに多くの時間を費やした。 本研究にふさわしいベテランDThの選定にも手間取った。ダンスムーブメントセラピー(DMT)の実施方法には背景理論の違いにより様々な方法がある。本研究では既存のビデオ画像で行ったDMTの方法(呼吸法を中心に据え、東洋のボディワークと即興的ダンスを統合する方法)を実施できるDThが必要であり、全国のDTh(日本ダンスセラピー協会認定DThまたは会員DTh)から協力を得られるDThを選定し、交渉・決定するのに時間を要した。 さらに、倫理審査会の承諾のため、主に医療機関との連携のための交渉に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
地域高齢者用DTh指導力チェックリスト下位項目Bの設定に向け、既存のDMTビデオ画像(メインDThを研究代表者が担当)の分析を進める。 計画時は、集団関係の活性化の臨床経験豊富な作業療法士1名、幼児のインクルーシブ教育におけるコミュニケーション促進に焦点づけた幼稚園教員の指導力形成研究を長年継続する研究者2名が共同で分析する計画であったが、分析者として本ビデオのDMTの方法に習熟するベテランDTh2名とベテラン作業療法士1名を追加する。 分析は、各2名の分析者群(DTh、作業療法士、研究者)の分析内容を帰納的方法で別々に質的に分析しカテゴリー抽出する。各群のカテゴリーを比較してチェックリスト下位項目Bにふさわしいカテゴリーを選定・決定する。決定に至る思考プロセスを記録し論文化する。 さらに、補足データの高齢者対象DMT画像(2回分)を新たに撮影する予定であったが、このために必要な人材確保が難しい。この場合、DMTセッションのメインDThは既存ビデオ画像分析担当DTh2名(第1・2)に各1回ずつ依頼するが、第3のサブDTh1名の確保も必要になる。補足ビデオ画像分析には第1・2DThと第3DThは不適切なため、分析担当に新たなDTh(第4)1名の確保が必要になる(もう1名は研究代表者が担当する)。 本研究のDMT方法を実践できるベテランDTh数は全国にも少なく、交通費・宿泊費などの予算が不足するため、第3・4DThの両方の確保が非常に難しい。そこで、両方の確保が努力しても出来ないときは、補足データのビデオ画像は1回分だけを撮影することに変更し、第1・2DThの1方にメインDTh、他方にサブDThを依頼する。この1回分のビデオ画像の分析担当DThを研究代表者と新たに依頼する第3DThが担当することにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗状況に遅れが生じており当初、使う予定だった予算を使用しなかったため。H28年度の研究実施計画では既存のビデオ画像の分析や、補足データ収集のためのDMTセッション2回程度の実施が完了し、データ分析をもとに「DTh指導力チェックリスト」(地域高齢者DMT用)試作版を完成する予定であった。 予定していたビデオ画像分析は分析機器(PF-NOTE)の予期しないバージョンアップのために機器設定に手間取った。補足データ収集では倫理審査で被験者(地域高齢者)への医師による低強度運動実施許可を得る方策を明確にした上で医療機関選定をする必要があり、手間取った。本研究に必要な技能を有するベテランDThを選択・確定するにも時間を要した。このために予算を予定通りに執行できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
主に本州から本研究に必要な技能を持つベテランDTh数名を呼ぶための交通費・宿泊費・謝金、補足データ収集に必要な被験者のための医師診断書、被験者謝金、実験補助者謝金や物品費に使用する。平成29年度・30年度にもこれらの支出は引き続き必要となる見込みである。 また、平成29年度・30年度実施のDTh養成講座カリキュラムの質を充実するための講師への交通費・宿泊費・謝金に充当する。
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