研究課題
集団ダンスムーブメントセラピー(DMT)はストレス軽減に役立ち、心身に包括的な健康促進効果をもたらす安全で心地よい優れた身体活動(作業)であり、虚弱な高齢者も参加できる。DMTを地域高齢者の健康促進活動として普及するためには、質の高いダンスセラピスト(DTh)の養成が急務である。本研究は地域での健康促進活動を志向する作業療法士(その他の医療福祉教育専門職)に養成講座を受講させ、地域在住高齢者にDMTを指導できるDThとして育成するためのカリキュラムと「DTh指導力チェックリスト」(地域高 齢者DMT用)を作成することを目的としている。チェックリストはDTh指導力の現状や改善状況を簡便に評価し、作成したカリキュラムの有効性の検討に有用と考えている。H 28年度は、チェックリスト試作版作成に必要な文献資料の収集・整理や研修参加を行い、DTh養成講座カリキュラムの大まかな構想を考案した。また、ビデオ分析に用いるPF-NOTEの利用法の調整に時間を要した。H29年度はDTh指導力チェックリストの観察可能な下位項目設定のために、既存の DMTビデオ画像(地域に在住の高齢女性対象。対照群に比し心身に有意なストレス改善効果あり)の分析をPF-NOTEを利用して行った。さらに、補足データとしての高齢者(男女)を対象としたDMT画像(3回分)を新たに撮影し、ビデオ分析を行った。現在、このデータの質的分析を継続中である。なお、チェックリストの下位項目は、A:1)気分改善・ストレス軽減に働きかける能力、2)生活体力向上に向けたセッション構成力、B:3)参加者との身心を用いた相互交流能力、4)集団関係育成力、5)その他の能力を仮定している。ビデオ画像の質的研究から抽出されるカテゴリにより、実際のDMTセッションで必要とされるDTh指導力を実証的に明らかにして行く。
4: 遅れている
地域高齢者用ダンスセラピスト(DTh)指導力チェックリスト下位項目Bの設定のために、既存のDMTビデオ画像の分析が必要である 。そのために使用する機器PF-NOTEが、業者の都合によりバージョンアップしており、計画していた設定では全く動作しない状況とな った。業者のコネクタ納品は古いバージョン用であり新バージョン用のコネクタ準備に時間を要した。新バージョンPF-NOTEでビデオ 解析するための様々な設定を繰り返し試行し、解析可能な方法を見出すのに多くの時間を費やした。本研究にふさわしいベテランDThの選定にも手間取った。ダンスムーブメントセラピー(DMT)の実施方法には背景理論の違いにより 様々な方法がある。本研究では既存のビデオ画像で行ったDMTの方法(呼吸法を中心に据え、東洋のボディワークと即興的ダンスを統 合する方法)を実施できるDThが必要であり、全国のDTh(日本ダンスセラピー協会認定DThまたは会員DTh)から協力を得られるDThを 選定し、交渉・決定するのに時間を要した。さらに、倫理審査会の要請により、主に医療機関との連携のための交渉に時間を要した。また、ビデオ分析は共同研究者2名ずつでの分析のため、日程調整が必要で、研究代表者の希望通りにはビデオ分析日を調整できないため、長期間を要した。
地域高齢者用DTh指導力チェックリスト下位項目の設定に向け、分析者群(DTh、作業療法士、インクルーシブ教育研究者各2名)によるビデオ画像分析の言語内容を帰納的方法で質的に分析しカテゴリー抽出する。先行研究とも照らしてチェックリスト下位項目にふさわしいカテゴリーを選定・決定する。決定に至る思考プロセスを記録し文章化する。今年度が最終年であるため、この質的分析によって抽出されるカテゴリを利用して「DTh指導力チェックリスト」(地域高齢者DMT用)試案を作成する。また、DThの指導力養成に向けたカリキュラム(5時間/日×6回程度)を、このカテゴリを元に単元化して作成し、健康促進活動を志向する作業療法士(その他の医療福祉教育専門職)5名程度に養成講座として提供する(研究代表者・分担者による講座のほか、適切な講師を招聘して実施)。受講者同士で対象者役とDTh役を交代で務め、集団ダンスムーブメントセラピー(DMT)模擬セッションを繰り返し体験する学習をカリキュラム内容に含める。模擬セッションでは通常のセッションと同様にセッションについての対象者の感想をシェアする時間を必ず設ける。1)受講期間の初期と終期に、DMT模擬セッションのDTh役受講者の「DTh指導力チェックリスト」得点を評価し、DMT指導力の変化を得点化する。また、2)カリキュラム終了時に「DTh指導力チェックリスト」、DMT実施やカリキュラムについての感想などを受講者から聞き取る。1)2)のデータを元に、「DTh指導力チェックリスト」(地域高齢者DMT用)試案やカリキュラムの改良点について考察し、より適切な「DTh指導力チェックリスト」とカリキュラムを提案する。最終的に提案するカリキュラムや「DTh指導力チェックリスト」の有用性, DMTの効果を地域在住の高齢者を対象に検討する研究は今後の課題とする。
論文投稿料や研究分担者に配分した旅費の未使用が生じている。また、H30年度実施のDTh養成講座カリキュラムの質を充実するために招聘する講師への交通費・宿泊費・謝金に充当する資金が必要なため、意図的に今年度の使用を抑制した。講師投稿料や旅費の使用のほかは、主に、講師の招聘に充当する予定。
すべて 2017
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北海道作業療法
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