研究課題
本研究の目的は三次元動作分析装置によって得られる身体表現マーカーとfNirs装置の脳活動の計測によって得られる脳内表現マーカーを融合させた評価方法を考案し,お互いのマーカーを関連付けて分析することで,脳卒中片麻痺者が使用する装具評価方法や選定方法にいかすことである.研究機関全体を通して,健常者15名を対象とした脳活動の基礎計測を実施した後に脳卒中片麻痺者8名の脳活動計測と三次元動作分析装置を用いた動作分析装置による歩行分析を実施した.歩行分析では,足関節,膝関節,股関節の関節モーメントと角度,骨盤と体幹の角度を解析指標として,歩行立脚期を3相にわけて特異点を抽出し,特定の領域(補足運動野を中心とした領域)の脳活動の変化と抽出したパラメーターについての相関関係を分析した.結果として,脳卒中片麻痺者では補足運動野の活動と立脚期後半の足関節底屈モーメントに高い相関関係がみられた.また,体幹の直立を促す装具を装着することで骨盤と体幹の角度と脳活動にも有意な相関関係がみられた.我々が渉猟しうる限り脳卒中片麻痺者を対象として脳活動と三次元動作分析装置から得られる運動学,運動力学的なパラメータを組みあわせて分析を行った研究はこれまで行われておらず,新しい評価方法として新規的かつ有意義な評価方法を提案することができた.また,装具を装着すると脳活動と運動学的なパラメータの関係にも変化が認められたため,歩行能力の評価方法だけでなく,新しい装具を選定する際の評価指標として役立つ可能性もある.