我々は皮膚に与える伸張や弛緩が関節運動を変化させることを研究してきた。その結果関節運動に伴い、体節同士が近づく運動では、皮膚が遠ざかり、体節同士が遠ざかる運動では皮膚が近づくように動くことが分かってきた。研究全体の目的は、変形性膝関節症で見られるlateral thrustを新しいテーピング方法で抑制させる効果を動作解析装置を用いて検証するものである。第一段階として健常人の歩行中の下肢関節の運動を変化させるテーピングの方法について、動作解析装置を用いて計測し改良を行った。結果的には、膝外側の皮膚を伸張し、内側部を弛緩させる4つのエラスティックテープによる方法を適応した。この方法は、上記原則に即したものであった。大腿は20cm、下腿は20cmのelastic tapeを用い、方向を考慮して20%伸張させて貼付した。この段階で、上半身と下半身の相互補完による要素を考えに入れる必要性を感じ、歩行を含めたいくつかの動作で追加検証を行った。次に第二段階として、最終的に立案したテーピングにより、高齢者11名の歩行を動作解析装置で計測した。歩行中の膝関節動態の中で最重要と考えられる膝内反角度は動的膝内反角度DFTA(Dynamic Femoro-Tibial Angle)として立脚期中全体を計測した。DFTAは大腿および下腿セグメントの座標系が作る角度のうち、内外反に関わる前額面角度である。結果的に、DFTAはテープ貼付によりにより立脚期中平均0.92degの内反角度の減少が生じた。また立脚期の時間正規化した結果、立脚期中のどの時期においても、テーピング施行前と比較してDFTAが減少していた。本研究の限界は疼痛の無い被験者を用いて施行したことと、即時変化のみを調査した横断実験であることである。
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