研究課題/領域番号 |
16K01519
|
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
佐藤 春彦 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (30274062)
|
研究分担者 |
岩崎 俊之 北里大学, 医学部, 准教授 (70265627)
岩瀬 大 北里大学, 医学部, 助教 (30406946)
井上 剛伸 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 福祉機器開発部, 研究部長 (40360680)
白銀 暁 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 福祉機器開発部, 研究室長 (90404764)
高嶋 淳 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 福祉機器開発部, 研究員 (90711284)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 脳性麻痺 / 粗大運動能力分類システム / ウエアラブルセンサ / 日常生活姿勢 / 変形予防 |
研究実績の概要 |
脳性麻痺児に見られる「風に吹かれた股関節(以下WD)肢位」は股関節脱臼や側弯など、姿勢変形との関連が強いと見られている。しかし、実際に脳性麻痺児がいつ、どのくらい長くWD肢位を取っているのかは不明である。今年度は昨年度開発した客観的手法を用い、脳性麻痺児のWD肢位を記録し健常児と比較した。対象は5歳から18歳の脳性麻痺児13名(男4名)と4歳から17歳までの健常児11名(男6名)とした。股関節肢位計測のため、対象児には小型加速度ロガーを胸骨前面、両大腿中央前面に貼り付け1日自由に過ごさせた。記録された加速度情報からWD肢位を同定した。WD肢位の合計時間および同一姿勢最長時間は、脳性麻痺児を運動能力段階(GMFCS)別に軽度(1・2・3:5名)と重度(4・5:8名)に分け、健常児と3群で比較した。その結果、健常児でも就寝中はWD肢位が見られており、平均で190 (SD 21)分であった。これは軽度の脳性麻痺児平均90 (SD 65)分、重度の平均204 (SD 187)分と差はなかった。しかしながら、脳性麻痺児では姿勢が変わらない時間が長く続いており、同一姿勢最長時間は健常児で52 (SD 20)分、軽度で105 (SD 49)分、重度で209 (SD 168)分と大きな差が見られた(p<0.05)。また、重度の脳性麻痺児では9時間以上同じ姿勢であった児も見られた。WD肢位は脳性麻痺特有の姿勢と捉えられがちだが、睡眠中は健常児にもよく見られる姿勢であり、その合計時間は脳性麻痺児と変わらなかった。しかしながら、健常児はWD肢位のままの時間は短く、1時間未満で姿勢を変えていたのに対して、脳性麻痺児では軽度で2時間弱、重度では3時間以上続いていた。本研究で明らかになったWD肢位の連続時間は、障害が重度な児ほど姿勢変形を来す背景にあるのかもしれない。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
28年度開発機器を用い、脳性麻痺児と健常児における日常生活姿勢を計測し、両者の違いを明らかにしている。ただ、脳性麻痺児でも、運動能力の差による生活姿勢の差がうかがえることから、今後さらに症例数を増やし、統計学的な差異についても検討を加えたい。
|
今後の研究の推進方策 |
研究参加者の応募が予想より少ないため、期間を延長して募集を続けている。脳性麻痺児の運動能力の差による生活姿勢の検討に加え、不良姿勢が続く児に対する姿勢ケアの実施も進めていきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は開発した股関節肢位計測システムを用いて、5歳から18歳までの健常児、および同じ年代の脳性麻痺児に対して協力の依頼を呼びかけ、計測を実施した。およそ60名の計測を予定していたが、予定した計測日に対象者が体調を崩すなどや、計測システムの数が限られていることから、現在およそ25名の計測にとどまっている。今後は計測システムの数を増やして同時に複数人の計測ができるようにし、効率的に進めたい。計測システムの数を増やすためには、その主要な材料である加速度センサが必要であるが、メーカーに問い合わせたところによると、現在問題が見つかり、生産を一時止めているとのことであった。29年度内にセンサを購入することは難しく、30年度で購入したいと考えている。
|