研究課題
脳性麻痺児に見られる風に吹かれた股関節肢位(Windswept hip position)とは、膝を立てて仰向けで寝たとき、下肢の力を抜くと、その膝が右、あるいは左へパタンと倒れた肢位のことである。腰がねじれ、左右非対称な姿勢を取ることで、股関節脱臼や側弯など、姿勢を大きく崩す変形との関係が強いとされている。本研究では、実際に風に吹かれた股関節肢位が脳性麻痺児の日常生活の中でどれだけ見られるのか、健常児との違いや運動機能レベルの違いに着目して検討した。対象は軽度の脳性麻痺児9名(杖や補装具を使い自分で歩けるレベル)、重度の脳性麻痺児17名(自分で移動できず、車いすで生活するレベル)、健常児12名とした。それぞれの児の胸部と左右大腿に小型の加速度ロガーを貼り付けて普段通りの生活を過ごさせた。24時間経過後にロガーを回収し、記録された加速度情報を元に、1分ごとに肢位を決定した。そして、軽度と重度の脳性麻痺群と健常群の3群について、昼間の姿勢と睡眠時の姿勢を比較検討した。その結果、次のことが判明した。①日中は、重度脳性麻痺群は他よりも長い時間風に吹かれた股関節肢位をとっていた。②夜間は健常児も風に吹かれた股関節肢位を取ることが多く見られ、その合計時間では各群で差が見られなかったが、姿勢の持続時間では、重度脳性麻痺児が他の群よりも延長していた。③夜間の股関節肢位の左右差は、重度脳性麻痺児が大きく、健常児や軽度脳性麻痺児では左右差が見られなかった。以上のことから、睡眠時に見られる風に吹かれた股関節肢位は、重度脳性麻痺児だけに見られるものではなく、健常児にも見られる自然な肢位であるが、重度脳性麻痺児は左あるいは右に倒れたら、そのまま姿勢を変えることなく、非対称な姿勢が続くことが明らかとなった。このことは、重度脳性麻痺児は風に吹かれた股関節変形を起こすリスクが高いことを示している。
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Physical Therapy Research
巻: 23 ページ: in press