研究課題
本研究は脳血管障害患者の手の運動意図に同期した感覚フィードバックを付与するロボットシステムの構築を通じて,従来廃用手とせざるをえなかった重度の手指麻痺を回復へ導く自立的なリハビリ技術の確立を目的としている。平成28年度は(1)咀嚼/脳波による運動意図を検出するDMBシステムの作成,(2)運動経路の再構築に最適なフィードバック手法の検討,(3)咀嚼/脳波DMBシステムを用いたリハビリ効果の定量化に取り組んだ。(1)では咀嚼,脳波の両方を入力とするDMBシステムを予定通り完成させ,外来・入院患者30名を対象にDMBの単回施行と2週間の連続施行における運動関連脳活動ならびに手指運動機能の変化についての臨床データを取得した。(2)については(1)で作成した脳波を用いたDMBシステムを対象に,視覚と体性感覚のフィードバックを同時に与える場合と1秒の時間遅れをつけて与える場合とで脳波計測実験を行い,複数感覚入力が時間的な整合性を持ってフィードバックされるBMIが最適であることを明らかにした。(3)では麻痺や痙縮を伴う麻痺手においてもその可動域や指にかかるトルクを定量的に計測することが可能な手指可動範囲計測装置を研究協力者の伊藤工業と共同で開発し,村田病院の協力のもと実際の脳卒中患者に適用して良好な結果を得た。これらの成果は国際会議における招待講演等で発表したほか,BMIリハビリテーションの方法ならびに麻痺手機能の定量的な計測装置の発明として2件の特許出願を行った。
2: おおむね順調に進展している
DMBシステムは利用患者や病院スタッフからの意見を聴取し,視覚刺激・教示のタイミング・ユーザーインターフェースなどについて数回の改良を行った。医師やリハビリスタッフ単独での操作が可能なグラフィカルユーザーインターフェースを作成したことで,DMBシステムを病院へ常時設置し,多くの患者データを取得できるようになった。また麻痺手の機能回復の要となる運動関連脳活動(事象関連脱同期:ERD)信号を徐々に増大させるためのトレーニングアルゴリズムも新規に開発し,健常者ならびに脳卒中患者での検証実験が進行中である。
DMBによるリハビリテーションプログラムのプロトコルをおおよそ決定することができたため,平成29年度以降は計画書の予定に沿って重症度別の機能回復効果の同定ならびに在宅用DMBシステムの開発を行っていく。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 備考 (3件) 産業財産権 (2件)
生体医工学
巻: 55 ページ: 1-8
10.11239/jsmbe.55.1
巻: 55 ページ: 9-16
10.11239/jsmbe.55.9
Clinical and Experimental Dental Research
巻: 2 ページ: 129-135
10.1002/cre2.32
http://www.isc.meiji.ac.jp/~yumie/index.html
http://www.meiji.net/study_movie/science_and_technology/vol22_yumie-ono
http://www.ase.sci.waseda.ac.jp/graduate/interview012.html