研究課題
平成29年度は開発したDMBシステムを慢性期外来患者27名,回復期入院患者9名へ適用し,麻痺・感覚障害の重症度別のDMBリハビリテーションの機能回復効果について検討した。外来患者に対してDMBによる運動想起訓練を単回施行した結果,手指の痙縮(Modified Ashworth Scale: MAS)が有意に改善する結果が得られた。慢性期患者を麻痺の程度(Brunnstrom Stages of Stroke Recovery: BRS)ならびに感覚障害の程度(Stroke Impairment Assessment Set: SIAS)によってサブグループに分類した検討においても,麻痺からの回復ステージに沿ったDMBの有効性が確認された。また,入院患者については運動想起訓練と一般的な理学・作業療法を組み合わせたリハビリテーションを28日間連続で施行し,このうちの前半あるいは後半の14日間ではDMBを用いたニューロフィードバックによる運動想起訓練を行い,残りの14日間ではDMBと同様の外骨格ロボットを装着するが,脳活動にかかわらず麻痺手を受動的に動かす運動想起訓練を行った。DMB使用期間のみで手指伸展筋の痙縮(MAS)ならびに手指機能(Fugl-Meyer Assessment)が統計的に有意に改善し,対照群では有意傾向にとどまった。DMB使用期間では,運動観察実行に伴う患側のERD強度も有意に増加していたことから,運動関連脳活動の強度に応じて生理学的な感覚フィードバックを付与することが患側運動野の運動回路の再構築を促し,高い臨床効果をもたらしたと考えられる。これらの成果は投稿論文や学会抄録論文として発表した。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度にDMBシステムのユーザーインターフェースを構築したことにより,共同研究先病院内のリハビリテーションスタッフによるデータ取得が順調に行われている。機能回復の要となる運動関連脳活動(ERD)信号を徐々に増大させるためのトレーニングアルゴリズムについても,若年健常者を対象として,外骨格ロボットによる手の動きの固有感覚フィードバック,脳波に同期しない偽フィードバック,脳波に同期するが非生理学的な感覚フィードバック(トーンバースト音)によるERD訓練効果の検討を行った。想起する運動と同等の運動感覚を引き起こす固有感覚フィードバック群のみに有意な訓練効果が認められ,本リハビリテーション手法の優位性が確認された。本研究成果は脳神経科学の国際誌に投稿し,掲載決定している。
過去2年間の研究で当初の目的であったDMBシステムの確立がほぼ達成された。平成30年度はより多くのリハビリテーション機会を患者に提供するための在宅用DMBシステムの開発に取り組む。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 2件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (3件)
Neuroscience Research
巻: 133 ページ: 7~14
https://doi.org/10.1016/j.neures.2017.10.002
Neuroscience Letters
巻: 662 ページ: 195~204
https://doi.org/10.1016/j.neulet.2017.07.051
Advanced Biomedical Engineering
巻: 6 ページ: 53~58
https://doi.org/10.14326/abe.6.53
NeuroImage
巻: 157 ページ: 314~330
https://doi.org/10.1016/j.neuroimage.2017.06.018
Trans. Japanese Soc. Med. Biol. Eng.
巻: 55(Proc) ページ: 562-564
https://doi.org/10.11239/jsmbe.55Annual.562
巻: 55(Proc) ページ: 565-568
https://doi.org/10.11239/jsmbe.55Annual.565
巻: 55(Proc) ページ: 556-559
https://doi.org/10.11239/jsmbe.55Annual.556
http://www.isc.meiji.ac.jp/~yumie/index.html
http://www.tateisi-f.org/html/reports/h27reports/2151006.pdf
https://www.meiji.ac.jp/koho/press/2015/6t5h7p00000isdvu.html