課題難易度と中央実行ネットワーク(CEN)およびディフォルトモードネットワーク(DMN)賦活度の大小との関係を若年健常群と中高年健常群に対するfMRI実験を行った。対象は若年群13名,中高年群7名であった。負荷課題には聴覚性連続暗算課題(PASAT)および視覚性連続暗算課題(PVSAT)を用い,統制課題は数値の黙読課題とした。PASAT,PVSATの刺激提示間隔は0.5秒(高難易度),1秒(中難易度),1.5秒(低難易度)とし,課題施行中の脳活動をfMRIにて記録した。記録したデータは,SPM12を用い,集団解析(Group Analysis,GA)と共通性活動評価解析(Conjunction Analysis,CA)にてPASAT,PVSATにおける難易度とCEN,DMNの賦活度を調べた。 その結果,PVSATのGAにおいて,若年健常群ではCENは難易度が高いほど賦活が大きくなり,DMNは難易度が高いほど賦活の減弱度が大きくなるという難易度依存性を認めた。しかし,中高年健常者群については,難易度依存性はCENのみに認められ,DMNでは認められなかった。CAにおいても同様の傾向が認められた。一方,PASATでは一貫した傾向は認められず,今回の研究で用いた提示条件では,聞き取りにくい,難易度が高すぎるなどの要因が結果に影響したのではないかと考えられた。 以上のことから,視覚性負荷課題においては,若年健常者では課題難易度に依存してCENとDMNの切り替えが明瞭なものになるのに対して,中高年健常者ではCENとDMNの切り替えが明確には認められず,特にDMNのON-OFFが行われなくなる傾向が伺えた。
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