研究課題/領域番号 |
16K01531
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研究機関 | 川崎医療福祉大学 |
研究代表者 |
妹尾 勝利 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 准教授 (50299260)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 前腕能動義手 / 義手の懸垂 / 義手の装着感 |
研究実績の概要 |
平成29年度の研究目的は、ソケットのアクリル樹脂硬度を従来の硬度(以下、硬性ソケット)と軟性材料のみ(以下、軟性ソケット)とした時のソケット内の剪断力と圧力を計測し、ソケットのアクリル樹脂硬度の違いが肘システム義手の装着感や操作性に影響する要因となり得るかを検討することであった。対象者は健常成人5名であった(そのうちの2名はソケット内の剪断力と内圧および肘関節の可動域(以下、ROM)を計測し、3名は肘関節のROMのみを測定した)。 その結果、肘関節のROMは、屈曲が硬性ソケット124±9.70°・軟性ソケット134±8.60°(p=0.00)、伸展が硬性ソケットで-6±8.00°、軟性ソケットで-4±5.83°(p=0.18)であった。硬性ソケットと軟性ソケットの剪断力(X軸・Y軸)の差は、前面・後面・内側面・外側面において2名ともすべて1N以内にあった。硬性ソケットと軟性ソケットの圧力(Z軸)の差は、前面では1名が軟性ソケット、1名が硬性ソケットで大きく、後面と内側面では2名ともに硬性ソケットが大きかった。また、外側面では2名ともに軟性ソケットが大きかった。これらの結果より、軟性ソケットは、硬性ソケットよりも軟部組織の移動を許容し、ソケットそのものの形状が変化することで肘関節の可動範囲が広がることやソケット内の剪断力はわずかではあるが、ソケット内の圧力は肘関節の屈曲と伸展に伴い増減することが示された。 ソケットのアクリル樹脂硬度の検討やそれに伴う軟部組織の形状変化とソケットの適合を検討することは、肘関節のROMの拡大、肘システム義手の装着感や操作の改善の要因と成り得ると思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度の成果より、ソケットのアクリル樹脂硬度は可能な限り柔らかくすることが肘システム義手の操作性や装着感に良い影響を与えることが分かった。しかし、義手の懸垂においては上腕カフの検討も重要であり、この部品の検討に時間を要している。現在はこの部品と義手の懸垂の検討を行っており、決定次第、健常者を対象として模擬肘システム義手を作製する予定としている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度前期は、上腕カフによる義手の懸垂機構の研究を行い、模擬肘システム義手の作製とその操作性と装着感を検証する。この結果から、後期には実際の上肢切断者に対して肘システム義手を作製し、その使用状況から実用性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 平成29年度はソケット環境のデータ収集を行ったが、この結果からソケットに併せて上腕カフの検証を実施した上で模擬肘システム義手の作製をしたほうが、より実用性の高い義手となることが分かった。そのため、模擬肘システム義手の作製を平成30年度へと先送りしたため。 (使用計画) 上腕カフの検証後、模擬肘システム義手を作製し義手の操作性と装着感を検証する。その後、実際の上肢切断者へ肘システム義手を作製し、その操作性と装着感を含めた実用性を検証する。研究費は検証用の上腕カフと模擬肘システム義手の作製(健常者個人適合させる)、研究協力者への謝金、上肢切断者の肘システム義手の作製に使用する予定である。
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