研究課題
本研究は、頸動脈洞および大動脈弓に存在する血圧受容器が脳血管ならびに心臓・全身末梢血管に与える影響について調べることを目的としている。頸動脈洞および大動脈弓を介した動脈血圧反射と脳血管との関係解明についてヒトを対象としたデータ収集を行った。カフを用いて大腿部を駆血した後に開放すると、貯留していた血液が下肢に流れるため、一過性に血圧が低下する。この時、変化した血圧に相当する圧力を頸部に与えることによって、頸動脈洞の血圧受容器に刺激を与えずに、大動脈弓のみを刺激して心拍数および脳血流の応答を調べた。具体的には、血圧は連続血圧計を用いてbeat-to-beatで記録し、ブロワーを用いて血圧に対応する圧力を頸部を覆ったカラー内部に与えることによって、血圧低下時においても頸動脈洞の圧力を一定に保持した。脳血流は超音波ドップラーを用いて中大脳動脈血流速度を記録した。心拍数は胸部心電図から記録・算出した。大腿カフ解放後の血圧低下時に頸動脈洞圧を制御せず、血圧低下に伴って頸動脈洞にかかる圧力も低下すると、動脈血圧反射応答として心拍数が上昇するとともに、脳血流速度ならびに血管コンダクタンスが低下した。血圧低下時に頸動脈圧を制御して一定に保持すると、血圧反射応答としても心拍数上昇が減弱するとともに、脳血流速度および血管コンダクタンスの低下が減弱した。以上の結果は、頸動脈洞の圧受容器が心拍数および脳血流制御に影響することを示唆する。
2: おおむね順調に進展している
作成した血圧制御システムを用いて血管応答に関するデータを取得できている
作成した装置を用いてより詳細な血圧調節メカニズムを検討する
検証実験の一部を次年度に持ち越したため
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Journal of Physiological Sciences
巻: 68 ページ: S175