研究課題/領域番号 |
16K01536
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
滝沢 穂高 筑波大学, システム情報系, 准教授 (40303705)
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研究分担者 |
水野 慎士 愛知工業大学, 情報科学部, 教授 (20314099)
江崎 修央 鳥羽商船高等専門学校, 制御情報工学科, 教授 (30311038)
青柳 まゆみ 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (40550562)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 視覚障がい者 / 支援システム / RGBDセンサー / Kinect / XTion PRO LIVE / 白杖 / ゴーグル / 画像処理 |
研究実績の概要 |
視覚障がい者の周辺環境における人と物の認識と,それらの配置を認識し,情報提示することによって,視覚障がい者の公共空間での活動を支援する携帯型システムの開発を進めた.具体的には下記の3つの研究項目を進めた. (1)RGBDセンサーを搭載した白杖システムの改良:前年までの挑戦的萌芽研究では,RGBDセンサーである Microsoft Kinect を白杖に搭載したシステムを開発した.これは視覚障がい者の周辺にある空席(人の座っていない椅子),机,階段,エレベータなどを認識することができたが,白杖が重くなるという欠点があった.そこで,より軽量で同程度の測定性能を持つ ASUS XTion PRO LIVE を白杖に搭載したシステムを新たに開発した.また,人行列(例えば自動販売機に並んでいる人の行列)を認識するアルゴリズムを新たに開発し,白杖システムに実装し,評価実験を行った. (2)RGBD センサーを搭載したゴーグルシステムの開発:白杖部の更なる軽量化を目指して,Kinect をゴーグルに搭載した支援システムを開発した. (3)スマートフォンを用いた物体認識支援システムの開発:スマートフォンカメラで得られた画像情報を用いて,(a)室内照明のONおよびOFFを認識するシステム,(b)エレベータボタンの点消灯を利用した到着階提示システム,(c)エスカレータの有無とその昇降方向を認識するシステム,(d)トイレマークを認識するシステムの3つのを開発した.トイレマーク認識では,トイレマークのサンプル画像を正規化,ベクトル化し,サポートベクターマシンに学習させる.観測画像に設けた複数のサイズのウインドウを正規化し,サポートベクターマシンを適用して,トイレマークの帰属確率を求め,上位N個のウインドウをトイレマークとした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で示した3つの研究項目について,それぞれ達成度の評価を行う. (1)Kinect を搭載したシステムと XTion PRO LIVE を搭載したシステムを製作し,両者の測定解像度および物体認識精度(椅子,机,上り階段,下り階段,エレベータなど)を比較した結果,大きな差はないことが分かった.また,前者は商用電源(の代わりのUPSバッテリー)が必要だが,後者は UPS 給電が可能なため,センサー自身の軽量化だけでなく,付随デバイスの軽量化も達成することができた. (2)ゴーグルを装着した頭部デバイスの重量は増したが,白杖自身の軽量化には成功した.椅子と机の物体認識が可能な事は分かったが,多数のシーンでの実験を実施するには至らず,統計的な精度評価はできていない. (3)(a)から(d)のそれぞれの手法を Android スマートフォンに実装し,大学構内やショッピングセンターなどの実シーンでの精度評価実験を行った.照明とエスカレータ,男子トイレマークは十分な精度で認識できることが分かったが,女子トイレマークの認識が不十分であった. これらの研究項目の成果を,国内や国際の会議や論文誌で発表した.
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今後の研究の推進方策 |
上記3つの研究項目について今後の課題をまとめる. (1)Intel Real Sense R200 などのより小型軽量な RGBD センサーを用いることを検討する.このセンサーを用いた予備実験では更なる軽量化を達成できることは分かったが,測定可能距離が短かったり,解像度が低いことが分かり,認識性能とのトレードオフを考慮した認識手法の開発が必要と考える.また,認識可能な物体の種類を増やすとともに,それらの物体と人との関係を考慮して,行列の後ろに並ぶなど人との関わりをも支援するシステムの開発が必要であると考える. (2)前述したように多数シーンに基づく物体認識の精度評価が必要である.また,白杖と違って,頭部はセンサーの姿勢が安定しない(予備実験では頭部がフラフラと動いてしまう現象が発生した)ので,ソフトウェアとハードウェア両面からの安定化が必要と考える. (3)国内販売のスマートフォンでは撮影の度にシャッター音が鳴動するために,視覚障がい者が社会で使用することは難しい.手法の一部で EXIF 情報を使っているためにカメラの起動が必要で,スマートフォン画面のキャプチャでは解決できない問題があり,改良が必要と考える.また,前述の通り女子トイレマークの認識精度が低いので原因究明とアルゴリズムの改良が必要と考える. 上記の問題等に加えて,目隠し晴眼者や実際の視覚障がい者による使用者実験を行い,システムの性能を評価する必要があると考える.
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