・義手関節の柔軟性・安全性と可動域向上に貢献できる、空気圧人工筋肉(PAM)と増速歯車列を組合わせた関節駆動機構の評価実験用の装置を製作し、シミュレーション及び動作/衝突実験によりその評価を行った。歯車列を除いた機構に比べ、1)シミュレーションでは、一般的にはトレードオフ関係にあたる可動域及び出力トルクを、ある数値以下の負荷トルク環境下において改善でき、2)動作実験においても同様の効果が見られ、3)衝撃実験でも衝撃力を緩和することを確認している。 ・義手把持力(握力)に比例した力で健常腕側手首を締め付けるためのウォッチバンドタイプの空気圧駆動エラストマ製デバイスを試作し構造の最適化を試みた。このバンドは義手握力レベルを直感的にフィードバックさせるためのものであり、義手の対象物把持に合わせて同じように手首を締め付けることで、義手が使用者の手首を握るイメージに結び付く。具体的には探索的にデバイスの各部板厚を変えることで、動作実験において、昨年度試作したバンドよりも湾曲角度(可動域)と手首への押圧力(出力)を向上させる最適解(各部板厚組合せ)を確認できた。 ・上記バンドを用いて被験者テストを行い、手首に装着したバンドを作動させ入力空圧に対する締付レベル識別率を確認した。テストではバンドの押圧力最大約15Nを3段階(テスト1)、5段階(テスト2)、7段階(テスト3)に分けレベルを設定し、その各テストにおいて各段階のレベルでランダムに30回手首を握らせその際の正答率(握力レベルの識別率)を調査した。識別率はテスト1では95%以上と高く、テスト2でも70%以上であった。また各段階とも最高レベルの力は同一で2 kg以下であり、成人の握力を考えれば実験において被験者に痛みを与えてしまう可能性は限りなく低い。この被験者実験は国立大学法人千葉大学における学内の研究倫理審査委員会からの承認を受け行った。
|