研究課題/領域番号 |
16K01546
|
研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
八木 直美 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (40731708)
|
研究分担者 |
越久 仁敬 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (20252512)
永見 慎輔 京都大学, 医学研究科, 特定研究員 (60744042)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 嚥下障害 / 生体信号解析 / パターン認識 / 誤嚥 / スクリーニング |
研究実績の概要 |
現在、嚥下機能の評価は、嚥下造影検査が一般的であり、信頼性の高い検査であるが、X線被曝の観点から長時間の撮影や繰り返しの評価を行うことは困難である。また、レントゲン検査室でしか実施できず、検査者は解剖学的構造と嚥下障害の機序に関する知識が必要であり、被験者は、坐位で食べ物を飲み込んで行う検査であるので体位も限定され、就寝時などの仰臥位での検査は不可能である。そこで、人間にとって優しく非侵襲、非拘束なシステムであり、X線造影で検査不能な嚥下モニタリングを実現するため、本研究では2種類のデバイスを用いて、嚥下時の計測信号から3要素の計測情報(音情報、呼吸情報、喉頭変位情報)を取得し評価・解析した。日中の食品検査(物性調整されたゼリー及び水)により計測したデータより、それぞれを細分化した特徴量を分析することによって健常者、嚥下障害者別に日中の嚥下アルゴリズムの原理確認を行った。さらに、音情報と呼吸情報を用いて、誤嚥のリスクが高いとされる「吸息中の嚥下時」、「嚥下から次の吸息までの潜時」を抽出して検討した。また、嚥下機能評価のために目標数千例の被験者に対して健康状態、疾患詳細などの基礎情報調査を行った。健常高齢者および嚥下障害患者に対して健康状態などの調査を実施し、非侵襲かつ非拘束機器を用いて計測したデータを用いて嚥下障害スクリーニングシステムのための柔軟でロバストな手法を確立することを目的とした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
嚥下機能評価のひとつである嚥下造影検査との比較評価を実施するために、嚥下造影検査と本研究における嚥下モニタリングの同時計測を行った。対象は、健常者11名、嚥下障害者10名である。嚥下造影検査の画像解析評価で得られる咽頭相持続時間:pharyngeal response duration (PRD)、喉頭挙上遅延時間:laryngeal elevation delay time (LEDT)に対応する嚥下モニタリングセンサからの咽頭活動時間:laryngeal activation duration (LAD)、咽頭挙上時間:Laryngeal rising time (LRT)を計測した。健常者において、LAD: 959 ± 259 ms vs. PRD: 1062 ± 149 ms, R = 0.60の結果が得られた。また、LRT計測において、健常者: 320 ± 175 ms、 嚥下障害患者: 465 ± 295 ms, P < 0.001, t testの結果が得られた。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度における試験を継続的に行う。嚥下モニタリング計測から得られる音情報、呼吸情報、喉頭変位情報の3情報から嚥下呼吸状態および嚥下の回数、吸息相で起こる嚥下の割合、嚥下後吸息相が再開するまでの潜時の情報から誤嚥のリスク評価および、音、呼吸、喉頭変位のタイミング評価、睡眠時無呼吸の評価等を同時に行う。さらに、被験者の背景や嚥下状態の関係を検討することにより、どういった場合に誤嚥が起こる可能性が高くなるのかを明らかにする。日中の嚥下評価結果をもとに、夜間の嚥下を評価するシステムのプロトタイプ構築に繋げる。
|