研究課題/領域番号 |
16K01555
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
菊池 武士 大分大学, 理工学部, 准教授 (10372137)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 福祉工学 |
研究実績の概要 |
手指と手首の関連が重要であるにもかかわらず,その効率的な訓練や評価手法が確立されていない背景には,この部位の解剖学的特徴が関連している.手指や手首を動かす筋肉は多くが手首をまたいで腱で接合されている.例えば,テノデーシスアクションのように手首の背屈時に自動的に手指の屈曲が誘発される.また,前腕部には手指,手首,肘の動作に関する細かな筋が集中している.近年,手指,手首の促通のために電気刺激が用いられる場合もあるが,前腕部の筋の集中によって大まかな動作補助に限定されている.前腕部への電気刺激に手指および手首への力覚刺激を組み合わせることによって,分離運動に向けたリハビリ効果の増強が行われる可能性がある. そこで本研究では,1年目の取り組みによって,手指,手首の協調動作から分離学習までの効率的なリハビリテーションや評価を行うことができる新しいリハビリテーションロボット(Rehabilitation Robot for Hand, ReRoH)を開発した.ReRoHは手指姿勢計測センサ,手首回転センサ等の計測系,手首力覚提示用のERブレーキ,電気刺激装置等を有し,自身の手指・手首の動作を確認しながら,訓練できるように工夫した. 引き続き,2年目では,ReRoHの制御回路の改良,電気刺激位置の検討,および新しいリハビリテーションソフトウェアの開発を行った.電気回路には,市販のマイコン回路と自作のアンプ回路を組み合わせて開発し,センサによる計測,電気刺激の強度とタイミング調整,グラフィックPCとの通信をコンパクトな構成で可能とした.訓練アプリケーションとしては,Unityを用いた2次元ゲームを開発した.手首の運動と手指の運動の協調・分離を自然に誘発するソフトウェアを開発することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は3年計画とし,1年目にシステム開発,2年目にシステム改良と訓練ソフトウェア開発,3年目に患者を対象とした臨床評価としている.2年目の取り組みでは,1年目で開発したリハビリテーションロボットReRoHにおいて,制御回路の改良および手指と手首の分離・協調運動訓練が可能なソフトウェアを開発できており,当初予定を達成した.ソフトウェアに関しては,事前に作業療法士等の意見を聞きながら開発を行ったが,開発されたソフトウェアに対する試用,助言は今後の予定としている.
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今後の研究の推進方策 |
開発したソフトウェア,ハードウェアを研究協力病院数か所に持ち込み,電気刺激に精通した療法士や医師からの助言を得ることでブラッシュアップする.まずは学内において,学内倫理審査の承認を得て健常者に対する評価実験を行い,電気刺激法の検討を行う.その後,協力病院の倫理審査の承認を得て脳卒中片麻痺等,中枢神経疾患者の訓練プログラムに導入し,課題の抽出と訓練効果の検証等を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 装置改良,修理のための機械部品費に関して当該年度に想定額より少ない額で対応できたため,物品費に未使用額が発生した.当初予定していた国際学会への参加ができなかったためその出張旅費および参加費相当のその他経費に未使用額が発生した. (使用計画) 今後,外部での実験を実施するため,装置の改良,修理対応が頻繁に発生するものと思われる.これらの対応費として物品費を次年度に使用する.また,成果発表としての国際学会において当初と異なるが同等の大会にアクセプトされ,次年度参加予定であるため,出張費,参加費として未使用額を次年度に使用する.
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