研究課題
本研究では,(1)快情動を伴う瞳孔反応のモデル化,(2)アニマル型瞳孔反応ロボットの開発,の検討を進めた.(1)では,まず快情動の典型として笑いに着目し,笑い時における瞳孔反応を解析した.その結果,快情動を伴う笑い時には,瞳孔が顕著に拡大することを示した.またリラックス等の快情動の沈静状態では,瞳孔が顕著に縮小することを確認した.次に,快情動に生成される音声に着目し,発話音声と情動状態との関係性について瞳孔計測装置を用いて解析した.この解析では,意味情報を含まない母音の発話,情動を意識しない発話,情動を意識した発話,の3種類を対象とした.その結果,単に母音を発声した状態であっても,発話に同調して瞳孔が拡大することを明らかにした.とくに,情動を意識した発話では,瞳孔が約1.5倍程度拡大することを確認した.これらの結果に基づいて,発話音声に同調して瞳孔反応を生成するモデルを開発した.このモデルは,予め閾値を設定しており,入力音声が閾値を超えると,瞳孔の拡大反応を生成するものである.(2)では,上記の知見をこれまで開発してきた瞳孔反応インタフェースに適用し,瞳孔反応のコミュニケーション効果を評価した.このインタフェースでは,半球ディスプレイにCGモデルを投影しており,瞳孔反応の拡大・縮小率を制御することができる.このインタフェースを用いて実験を行った結果,人間と同様の1.5倍まで拡大する表現が好まれることを確認した.次に,カメラにおける絞り機構を参考に,機構的に瞳孔反応を表現する瞳孔反応ロボットを開発した.このロボットはヒトの眼球の2倍の大きさであり,サーボモータにより制御している.このロボットに上記(1)のモデルを適用して実験を行った結果,発話に同調した瞳孔反応が「熱意」「感情表現」「興味度合い」等の,いわゆる親近性が向上する等,開発したモデルおよびロボットの有効性を確認した.
日本福祉工学会第18回論文賞受賞、第14回子ども学会議(学術集会)優秀発表賞受賞電気学会優秀論文発表賞受賞、電子情報通信学会中国支部連合大会奨励賞受賞、第18回IEEE広島支部学生シンポジウム優秀研究賞受賞
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日本感性工学会論文誌
巻: Vol.18, No.3 ページ: 187-193
https://doi.org/10.5057/jjske.TJSKE-D-18-00069