研究課題
口唇動作と固視微動の変化から、発話者の内的状態すなわち体調を把握することを目的として本研究提案を計画した。そこで、発話者の内的状態の一つとして疲労に注目し、疲労課題として用意した計算課題により疲労を与えることができた。疲労の評価にはCFF(critical fusion frequency:臨界融合頻度)を用いた。CFFの低下は視覚の末梢性疲労のみでなく、中枢性疲労の判定指標として測定の簡易性や判定性から有用とされている。全被験者でCFFが減少し、特に10人中6人の被験者で有意な減少が見られた。次に、注視中の眼球運動の標準偏差から疲労測定に効果的なパラメータとなるかを確認するために5分ごとの眼球運動の水平と垂直成分に分割した標準偏差を調べ、多重比較による検定を行った。その結果、多くの被験者で5分ごとの注視中の眼球運動の標準偏差で有意差が見られ、計算課題を行う中で被験者ごとに変化が見られることが分かった。さらにこれが計算課題の5分ごとの解答数とどのように関係しているかを確認するため相関係数と無相関の検定を用いて比較を行った。その結果、眼球運動の垂直成分もしくは水平成分と5分ごとの解答数に相関がみられた。これらの結果を用いることで課題中の集中度や疲労の指標として注視中の眼球運動の標準偏差を用いることができると考えられる。口唇動作では、計算課題前後の変化を「a」「i」「u」「e」「o」の母音を多く含む文章の発話時の開口面積から調べた。その結果、ほとんどの被験者で課題前に比べて課題後で開口面積が変化した。長時間の計算を行ったことによる疲労から変化したと考えられる。今回得られた成果は、作業前後の口唇動作の開口面積の変化と、作業中の逐次の眼球運動とくに固視微動の変化が疲労などの内的状態を測るパラ言語として有効なことを示唆したことである。
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IEICE TRANSACTIONS on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences
巻: Vol.E103-D,No.05 ページ: 1203-1207