前年度までに開発した装具荷重計測システムに装具の変形状態と膝関節の屈曲状態を同時に測定できるフレキシブルゴニオメータを加えた計測システムを完成させ、同装置を用いて、歩行中にかかる荷重と装具の変形状態および膝関節の運動を調べた。実験の結果、①片麻痺者では被験者によって荷重の掛かり方に個人差が大きく、健常者ではほぼ一定していること、②片麻痺者は歩行の後期のいわゆる前方に推進する力が多くの場合少ないことなどが分かった。また、同時に3Dスキャナ、3DCAD、シミュレーション(ANSYS)、3Dプリンタを使用した、義肢装具士がコンピュータ上で設計を行う“半自動装具設計製作システム”の開発も本年度も進めた。今年度は、生体から装具形状を切り出すことが可能であること、3次元の装具形状に有限要素解析(FEM)での評価が可能であること、装具設計の要素である、厚み・トリミング・コルゲーション(部分的に皺状のものをつけること)などの影響についても、3Dプリンタで製作した装具と有限要素解析にもとに評価できることを検証した。これらの結果を含め“半自動装具設計製作システム”の多くの基盤要素についてはほぼ構築できたと考える。 これらの成果は、雑誌AdvancedExperimental Mechanicsに原著論文として公開するとともに、日本設計工学会等でも発表を行った。さらに、本研究をまとめる形で、計測システムを用いて6名の健常者と9名の左片麻痺者の被験者ボランティアのもと歩行実験を行い、歩行中どの程度の荷重やモーメントが装具に生じるのかについて総合的に分析した。この結果については、日本実験力学会誌に現在投稿し、審査結果は2名の査読者ともに修正後掲載可の評価のもと現在再査読中である。
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