研究実績の概要 |
視覚補助具である遮光眼鏡における,客観的な選択指標検討のため,眼鏡装用時の色知覚に着目し,検討を進めてきた.令和3年度までに,市販の遮光眼鏡による評価を行うとともに,系統的に錐体刺刺激量比や視感透過率を設定し評価を行うために,視感透過率20%~80%,錐体刺激量比(L, M, S) = (1:1:1)~(1:0.5:0) の範囲を概ね再現できる,12種類のフィルター設計を行い,作成した,室内照明環境を想定した1,000 lx, D65照明下で行った,作成したフィルターによる若年者を対象とした測定では,色弁別の結果において,S錐体刺激量比が40%以下となると色覚異常の程度が中程度以下,30% 以下となると重度と同等となる結果が得られた.色分類の結果においては,S錐体刺激量比が40%以下になると,遮光眼鏡非装用時に比べ,大きく色覚特性が変化する傾向が見られた.このことは,色弁別において中程度以下の色覚異常と判断された場合でも,色分類は成り立たないことがありうることを示唆するものと考えられた. 野外視環境を想定し,高照度下 (20,000 lx) における遮光眼鏡装用時の色弁別特性の測定も行った,1,000 lx の結果と同じく,S錐体刺激量比に応じた特性の変化 が見られたが,より低いS錐体刺激量比まで,遮光眼鏡非装用時と同等の特性が維持された. 本年度は,中高齢者に対する測定に取り掛かった.測定は眼科における色覚検査数種(石原表,100-hue test, Panel D-15, Lanthony desaturated 15 hue test, Lanthony Tritan Album, 先天色覚異常者の方のための色の確認表)とJIS安全色7色を使用して行った.これまでの若年者対象の結果との差異の比較が可能になることが期待されたが,系統的な結果を得ることはできなかった.
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