研究実績の概要 |
自律神経や生体応答の健全性を評価するために,心拍変動解析が評価されてきた。またこれらを登山に適用して,登山時の生体負荷を評価した報告も多くみられる。他方,高地では,心拍変動スペクトル(FFT)の低周波成分(LF)および高周波成分(HF)のパワーが減少し,検出不可能になるという事象もみられていた。そこで実験1として 心拍変動にたいして非線形解析を適用することによって,低酸素環境における生体情報を定量評価し,さらに実験2として高地での運動に適用させた。心拍変動は,SD1,SD2,ShanEn,SampEnなどによる評価を行ったが,最終的に常に安定した数値の得られたDFA (Detrended Fluctuation Analysis) 法を採用(α1値)することとした (Kubios V.3.0) 。 (実験1) 一般健常者5 名(22.6 ± 0.9歳,170.9 ± 8.5cm,67.1 ± 10.1kg) を対象に,20.94 % (0 m)、17.38 % (1,500 m)、 15.28 % (2,500 m)、14.23 % (3,000 m)、13.40 % (3,500 m) および12.56 % (4,000 m 相当) の低酸素環境 (Hypoxico: エベレストサミットII) を実験室内に設定 (室温22℃、湿度50%) し,自転車エルゴメータを用い50W から25Wずつ(各5分) 200W に至る漸増負荷運動を行わせた。心電図のR-R間隔は,仰臥位安静時および運動中,Polar V800により連続測定した。 (実験2)経験を積んだトレイルランランナー6 名を対象に,富士山御殿場口5合目から8合目を往復するトレイルランレースの前後 (安静仰臥位) およびラン中のα1値を評価した。レース中は,解析範囲を3 分間とし,2 分ごとずらして移動平均をとった。
|