2人1組の同時力発揮課題(ジョイント課題)の先行研究では,力発揮が負の相関関係になり,互いに誤差補正し(相補的力発揮),そのタイミングが高い同期性を示した。本研究では2人のジョイント課題の結果が3人以上の場合でも成り立つかどうかを検討した。 2人課題,3人課題,4人課題では2~4人の参加者が1Hzで同時に力を発揮し,その総和が5%MVCのvalley forceと10%MVCのpeak forceに周期的に一致させた。その結果, 2人によって発揮された力の相関関係は負を示し,残りの1人ないし2人は中間の力を発揮した。したがって, 3人課題と4人課題では2人の参加者が相補的に誤差を補正し,“中間の力を発揮した”参加者が両者の間でその誤差補正を微調整していた。 次に,個人の運動学習では動作の要素間の相互作用の強い系列動作は分習法より全習法が適していると言わせている。これを個人運動から個人間運動に拡張し,個人間の相互作用が強いと,分習法より全習法が適していることを明らかにするために,個人運動(個人条件)と個人間運動(ジョイント条件)を組み合わせて両者間の転移を検討した:個人条件‐ジョイント条件‐個人条件(IJI課題)とジョイント条件‐個人条件‐ジョイント条件(JIJ課題)。 両課題共に,ポストテストはプレテストより力の標準偏差が小さく,ジョイント練習と個人練習との間に力の変動の両側転移が見られた。しかし,相関係数を検討すると,IJI課題ではジョイント練習の進行に伴って負の相関が強まり,個人条件のポストテストはプレテストより力の標準偏差が小さかったが,JIJ課題では個人練習の進行に伴う力の標準偏差の減少はジョイント条件のポストテストとプレテストの相関係数の有意差をもたらさなかった。つまり,2人の相互作用を練習するためには2人の練習が必須であることを示した。
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