研究実績の概要 |
【背景】我々の先行研究は2人の被験者が同時に力発揮し,その総和を目標値に一致させる課題を行った(J Neurophysiol, 2013, 2015)。その結果,2人の力が負の相関関係になり,相補的な力発揮が行われることを見出した。多くの運動制御理論(たとえばuncontrolled manifold 仮説)は被験者が作り出した誤差が増えると,誤差補正も増加すると予想している。 【目的】本研究は2人の同時力発揮課題を行う時に他者から外乱が与えられると,その誤差を補正するために協力者は強い相補関係を作るかどうかを検討した。 【方法】本研究は統制実験と外乱実験よりなる。統制実験は2人1組の10組で行われ,目標筋力は2人の右示指によって分離的に発揮される最大随意収縮の10%の総和である。外乱実験は3人1組の10組で行われ,2人の協力的な被験者aと bが統制実験と同一の目標筋力を発揮し,被験者cが母指あるいは示指で力発揮し,協力関係にある2人の力を加算あるいは減算することで外乱を与えた。外乱は目標筋力の1/4以下に設定した。 【結果】被験者cによる力の変動は実験中一定であった。外乱の有無に関わらず,協力関係にある2人の力発揮は負の相関関係を示し,2人は相補的に力発揮を行っていた。さらに,外乱がある時はない時よりも力の絶対誤差と標準偏差が大きかったが,2人の力の負の相関関係が強くなった。 【考察】外乱は2人の同時力発揮課題のパフォーマンスを低下させたが,相補的力発揮を促進した。
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