研究実績の概要 |
我々の先行研究は2人の実験参加者が同時に力発揮し,その総和を目標値に一致させる課題を行い,2人の力が負の相関関係(誤差補正)になり,その力発揮は高い同期性を示した(J Neurophysiol, 2013,2015)。本研究では2人同時力発揮課題の結果が3人以上の場合でも成り立つかどうかを検討し,最も高いパフォーマンスを示すグループの大きさを調べた。さらにグループの構成員の増加に伴い,怠慢な参加者がいるか(社会的怠慢)どうかも検討した。 参加者は28名の健康な男子大学生である。この研究は1-4名の参加者より構成された1人課題,2人課題,3人課題,4人課題よりなる。2-4人課題では全ての参加者が1Hzで同時に力を発揮し,その総和が5%最大随意収縮(MVC)のvalley forceと10%MVCのpeak forceに周期的に一致させた。1人課題では1人の参加者が同一の目標筋力を発揮した。 その結果,3・4人課題の力発揮の誤差補正は2人課題のそれより強かった。3・4人課題では,2人によって発揮された力の相関関係が負を示し,残りの1人ないし2人が中間の力を発揮した。2-4人課題の全ての参加者は力発揮の周波数を1Hzに一致させた。さらに,3・4人課題は1人課題より力と運動間隔の変動が小さかった。したがって,3・4人のグループは個人より高いパフォーマンスを示し,社会的怠慢はみられなかった。 さらに,本研究課題の最終年度にあたり,7編の原著論文をもとに,個人間協調運動に関するモノグラフ(244頁)をSpringerより出版した。原著論文の内容に個人間協調運動の背景と先行研究の概要を加えて上梓した。
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