研究課題
本研究は、特定の神経細胞群を時間及び部位選択的に抑制することを可能にした光遺伝学をマウス生体に応用し、ストレス負荷時に放出されるストレス因子コルチコトロピン放出因子 (CRF) を介したストレス反応と運動学習とのクロストークを明らかにすることを目的とした。2 年目までに、サンプリング時の侵襲性が低い尿中コルチコステロン濃度と 90-180 分の短期ストレス負荷との相関、及び 90 分間の拘束ストレス、あるいは非同腹仔雄との同居ストレス負荷後に前庭動眼反射 (VOR) 運動学習が障害されることを C57BL/6 マウスを用いて明らかにした。これらを踏まえ、平成 30 年度は、1日 180 分間の拘束ストレスを7日間連続して与えた際の尿中コルチコステロン濃度変化と VOR 運動学習への影響を調べたところ、コルチコステロン濃度に長期ストレスの顕著な影響は見られなかった一方で、VOR 運動学習は短期ストレスの時と同様、低下する傾向がみられた。また、緑色光照射により活性化するプロトンポンプ ArchT を CRF 発現細胞選択的に発現する CRF- ArchT マウスを用いて、拘束ストレス負荷中に視床下部室傍核周辺に緑色光を照射し、その後 VOR 運動学習を行なったところ、短期ストレス負荷群では運動学習が生じたが、長期ストレス負荷群では運動学習が障害されたままだった。本研究により、1. CRF が脳内の発現個所により運動学習に対して逆方向に働くこと 2. ストレス負荷の種類、時間などの違いにより、生体防御あるいは運動学習に関わる回路や分子が異なることが示唆される結果が得られた。将来的に、スポーツやリハビリテーションにおける効果的なストレス抑制につながる意義深い結果となった。
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Neuron
巻: 99 ページ: 985-998
10.1016/j.neuron.2018.07.034
http://www.pr.tokai.ac.jp/tuiist/tt/announcement_katou.html