本研究は、成長期(第二次急伸期直後の14歳~18歳)の女子中学・高校生を対象として、持久的運動後のDNA損傷・修復能を基準とした体細胞へのストレス耐性を酸素摂取能力及びエストロゲン濃度の観点から検討することを目的とした。第二次急伸期後の女子中学・高校生(14~18歳)及び男子中学・高校生(14~18歳:コントロール群)を対象に、① 最大運動:自転車エルゴメーターで最高酸素摂取量の測定を実施し、酸素摂取能力(持久的能力)を測定した。②最大下運動:最高酸素摂取量の60~65%の運動強度(60~65%VO2peak)で60分間の自転車駆動試験を実施し、運動前後で唾液及び尿検体を採取した。女子中学・高校生においては、エストロゲン(17β-estradiol)濃度が異なる卵胞期と黄体期でそれぞれ1回ずつ実施した。尿中8-OHdGの解析結果として、性周期による運動後(運動直後及び24時間後)のDNA損傷・修復能に関する顕著な差は見られなかった。一方、酸素摂取能力とDNA修復能との関連性について、酸素摂取能力が優れているほど、DNA修復能が高い傾向にあった。これらのことから、成長期の体細胞への酸化ストレスについて、中強度の持久的運動においては、酸素摂取能力に優れているほど、DNA損傷と修復能のバランスが保たれること(DNA修復能が高くなること)が推察される。しかしながら、17β-estradiol濃度と酸素摂取能力が共に抗酸化能として機能するかどうかの作用機序については、成長期にどの程度の運動強度・頻度・期間が抗酸化能を高めるかという点に焦点を当て、今後更なる検討が必要になる。
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