研究課題/領域番号 |
16K01611
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
坂本 昭裕 筑波大学, 体育系, 教授 (10251076)
|
研究分担者 |
渡邉 仁 筑波大学, 人間総合科学研究科, 研究員 (70375476)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | キャンプ / 自然体験療法 / 発達障害 / 社会性 / 事例研究 |
研究実績の概要 |
本年度の研究目的は、自然体験療法の社会性の障害に対する効果及びその治療的要因について検討することであった。平成29年8月に、発達障害児5名と定型発達児13名を含む自然体験療法プログラム(事前プログラム:1泊2日、メインプログラム:12泊13日)を実施し、社会性に及ぼす効果の検討及び、その治療的要因について3名の発達障害児の事例研究から検討を行った。まず、プログラムの社会性の効果に関する研究では、戸ヶ崎・坂野が作成した社会的スキル尺度をプログラムの社会的行動に適したものに修正した質問紙を用いて、プログラム前後、プログラム1か月後にデータを収集し比較検討した。その結果、社会的スキル尺度の下位尺度の関係参加行動得点において、発達障害群と定型群の間に交互作用が認められ、発達障害群は、キャンプ前に比べてキャンプ後、キャンプ1か月後において有意に高い値を示した。関係向上行動、関係維持行動については、プログラムの効果は認められなかった。したがって、発達障害群は、プログラムにおいて、社会的スキルのうち、人間関係に参加し、関係形成するスキルを向上させたと言える。また、発達障害児の事例検討から、社会的障害に対する治療的要因について検討した。その結果、①集団活動における対人行動、②スタッフのカウンセリングマインド、③自然の帰結、④充分な身体活動、⑤遊戯性、⑥達成感、⑦称賛の要因が明らかにされた。事例では、プログラムにおいて、対人葛藤などの不適応的な自己を体験することを繰り返しながら、受容される自己を体験し、集団への適応を果たしてゆくプロセスが観察された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、当初の計画通り自然体験療法プログラムを実施し、データを収集することができた。また、自然体験療法プログラムにおける発達障害児の社会性の障害の治療的要因やプログラムにおけるそのプロセスに関して知見を得ることができ、概ね予定通り進めることができている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、これまでの知見をまとめ、発達障害児の社会性の獲得に関するプロセスについて検証する。平成29年度とは課題が異なるため、平成30年度当初より、研究分担者及び協力者との打ち合わせを実施するなど研究推進のための方法について共有し遺漏のないように努める。また、研究協力者については、人数を確保して不測の事態にも対応できるようにしておく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
事例研究の調査面接のための旅費を確保する必要が生じたためであり、平成30年度においては、更に被調査者の数を増やして面接調査を実施する予定である。
|