研究課題/領域番号 |
16K01615
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
吉田 伊津美 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (30335955)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 運動能力 / 乳児期 / 基本的生活習慣 / 生活環境 / 幼児期 |
研究実績の概要 |
本研究は、幼児期の運動能力改善のために、乳児期の運動獲得及び基本的な生活習慣の形成等と幼児期の運動能力との関係を明らかにすることを目的とした。2年目の今年度は5歳児を対象とするMKS幼児運動能力検査5種目の実施(2年目縦断データの収集)と、幼児期の運動発達と乳児期の運動発達および基本的生活習慣の形成(自立)との関係について検討を行った。 運動能力検査は幼稚園3園の計130名からデータを収集した。このうち、2年間にわたり全5種目のデータをすべて収集できたのは70名、さらに保護者から質問紙の回収があったのは計53名(男児29名、女児24名)であった。測定値を5段階評定点に換算した合計点を算出し1年間の変化量を求めたところ、評定点自体にはほとんど変化はみられなかった(M=0.85、SD=2.33)。しかし分布ではマイナスに変化した者(変化量-5~-1)が26.4%、変化なし(変化量0)が15.1%、プラスに変化した者(変化量1~6)が58.5%と1年間の変化量には個人差がみられた。 乳児期の運動発達(早群/遅群)により運動能力の変化量を比較したところ、乳児期の初歩的な運動11項目のうち「寝返り」「ひとりすわり」「四つ這い」「高這い」「尻(いざり)這い」「ひとり歩き」の6項目で、また基礎的な運動10項目のうち「階段昇降」「三輪車(こぐ)」「片足立ち」「片足跳び」「スキップ」の5項目で、有意差はみられないものの(p>0.05)効果量は低から中程度であり、いずれも早群が遅群よりも変化量が大きい傾向がみられた。また、生活習慣の獲得時期では15項目中「おしっこ後に知らせる」「大便の前に知らせる」「紐を結ぶ」は早群が、「昼間のおむつが取れる」では遅群の変化量が大きい傾向がみられた。これらのことから、乳児期の運動発達及び基本的生活習慣の形成とその後の幼児期の運動発達の変化量との関係が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究計画は以下の通りであった。 1.幼児の運動能力検査〔前年度対象とした7園の5歳児クラスの幼児〕 2.乳幼児期の基本的生活習慣の形成に関する調査〔前年度使用した質問紙の基本的生活習慣に関する項目を使用〕 3.基礎集計と協力園への運動能力検査結果のフィードバック 今年度は前年度からの継続データの収集が目的であったが、前年度対象となった7園のうち4園は、5歳児がごく少数となってしまった等の理由により実施できず、幼稚園3園での実施であった。当初の計画より園数は少なかったものの一定数のデータは収集できた。また保護者を対象とする基本的生活習慣の形成に関する質問紙調査は、前年度の項目を使用予定であったが、ほとんどの質問項目において前年度4歳児までで自立していたことから実施しなかった。当初の計画を変更した点もあったが、次年度に計画していた分析に着手し始め、現段階までおおむね予定通り実施することができた。 成果の一部を公表・発信するため日本保育学会第71回大会での自主シンポジウムを企画、準備を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
研究のまとめと、その成果をもとに作成したリーフレットの効果を検証する。 これまでに収集したデータの分析から本研究の結果を総合的に考察し、乳児期の発達、自立との関係に焦点をあて、幼児の運動発達との関係を明らかにし、幼児の運動発達促進のための提言をまとめる(保護者向けリーフレットの作成)。これを対象園及び関連施設等に配布し、その活用と有効性について質問紙調査を行いリーフレットの効果(本研究の成果)を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
対象園への協力謝金を計上していたが、対象が公立園であったため謝金の受け取りを拒否され、謝金が派生しなかった。運動能力検査の実施に測定補助謝金を計上していたが、対象園数が減ったこと、天候などの都合で園だけで実施していただくことととなり人件費が派生しなかった。予定していた学会大会参加ができず旅費が派生しなかった。 (使用計画) 3年目に計画している保護者向けの研究成果リーフレットを充実させ、広く還元する。また成果の公表・発信のために学会での自主シンポジウムを開催、シンポジストの旅費等の関連経費に充てる。
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