研究課題/領域番号 |
16K01617
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研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
井谷 惠子 京都教育大学, 教育学部, 教授 (80291433)
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研究分担者 |
井谷 聡子 関西大学, 文学部, 助教 (30768263)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ジェンダー・ポリティクス / 体育カリキュラム / 性的マイノリティ / 性別二元制 / インタビュー |
研究実績の概要 |
本研究では,体育・体育科教育において,ジェンダー視点から周辺化される人々に注目し,1)学校期において運動やスポーツから離脱する人々 2)性的マイノリティとして困難を味わってきた人々 に焦点を当て,当事者の経験を通じて体育カリキュラムのジェンダー・ポリティクスを検討することを目的とした。H28年度の主な研究実績は以下の通りである。 1.国内外での先進的な研究についての調査:学校教育と性的マイノリティに関する理論的な研究とともに、近年、公表された実態調査などについて検討を行った。海外での研究調査のために、トロント、及びモントリオールで開かれた「脱植民地学会」「(北米)女性学会」に参加し、情報収集を行った。ジェンダー研究の動向としては、ジェンダーを民族や性的指向、障がい、年齢などのインターセクショナリティーの1軸として捉えるとともに、植民地主義など歴史的な時間軸で捉える多角的視点を持った研究が進展していることが認識できた。 2.日本体育学会第67回大会において、「性的マイノリティへの対応からみた学校体育のジェンダー・ポリティクス」と題した発表を行った。この発表では、教育と性的マイノリティに関する国際的、及び国内の経緯を示し、制度的な差別撤廃だけでは解決しない根深い問題を指摘した。特に、体育やスポーツは性別二分制と異性愛主義とが再生産されるホットスポットのような空間となっていることに焦点化し、カリキュラムの再考や学校体育の風土自体を見直す必要を示した。 3.次年度に予定している質問紙調査、及びインタビュー調査の準備を進めた。調査内容、対象者、実施方法について、対面での研究会とウェブ上での意見交換を重ね、質問紙調査を完成させた。対象者については、複数の大学において協力者の承諾を得た。また、京都教育大学の倫理審査を受け、調査内容や進行について特段の指摘はなく実施が承認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の初年度として、平成28年度は、次の4点を計画した。1.海外の先端研究調査・意見交換 2.2年次に予定している調査の準備として、①学校体育での経験に関する質問紙調査内容の確定 ②調査紙の作成 ③調査対象者の選定と承諾 ④インタビュー対象者の選定方法と内容検討 3.調査研究について倫理審査を受け、承認を得る 4.対面での研究協議会、及びインターネットによる協議、情報交換。 1については、対象とする学会、及び研究者について変更をしたが、プログラム内容や開催時期を考慮し、より充実した対象を選んだ結果である。2については、年度内に調査紙の印刷まで完了し、次年度の調査実施に向けた準備を整えた。3については、倫理審査を受け、特段の指摘なく承認された。4については、研究代表者のほか、研究分担者1名、研究協力者1名で研究チームを構成し、5回の対面での研究会と情報共有サイトを活用した情報共有・意見交換を軸に研究を進めた。 以上のほか、日本体育学会第67回大会において、先行研究などの集約と課題整理を目的として、「性的マイノリティへの対応からみた学校体育のジェンダー・ポリティクス」について研究発表を行った。研究発表については、当該年度の当初予定にはなかったが、予想以上に研究が進展し、第一段階としての研究発表が重要と判断した。研究分担者と研究協力者それぞれの専門性が生かされ、情報共有・意見交換の方法を工夫した成果と認められる。
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今後の研究の推進方策 |
2年次は本研究の中核的な調査・分析を次の3項目について進行し、得られた成果について、随時、学会、研究会等での発表やシンポジウムなどの企画によって公表する。 1.質問紙調査(関西の数大学、初年次学生男女1200名程度)の実施とデータ入力、集約、分析を行う。 2.インタビュー調査の対象者について、2つの観点(①学校期において運動やスポーツから離脱する人々の経験 ②性的マイノリティとして困難を味わってきた人々の経験)から選定し、承諾を得た対象者に実施する。実施方法については、人権上の配慮、及びセキュリティ上の留意点に沿って慎重に実行する。 3.海外の先端研究者からの知見を得るため、トロント大学のDr. Heather Sykesを招聘し、情報提供と意見交換を実施する。 研究を円滑に進めるため、研究協力者を1名追加し、研究代表者、研究分担者、研究協力者2名の研究チームで実行する。前年に引き続き、対面での研究協議会のほか、インターネットによる協議、情報交換によって効率的に実行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外文献や資料について、当初は日本語訳などの業者委託を予定したが、その必要がなくなった。また、研究会について、インターネット上での情報共有や意見交換を多用したため、対面で会議の回数が計画よりも少なくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、本研究の中核的な調査研究を進める予定であるため、質問紙調査の実施・回収・入力作業、およびインタビュー調査にかかる謝金が多額になる予想である。また、先進的な研究の資料収集や意見交換のため、海外からの研究者招聘に必要な旅費、謝金、通訳などの役務費などが発生する。研究会や学会発表などの経費も必要であるため、次年度使用額は不足気味と予測している。
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