本研究の目的は,児童が体育授業で学んだ「知識」をもとに,運動を評価することによる「思考・判断」を行うための動画テストを開発し,その有効性を検討することであった。 まず,教師から観察の視点や技術ポイントを示し,評価基準の説明がなされた授業を分析対象に,学習者自身の映像のみを再生する1画面映像と,「2画面比較映像」という提示方法の違う2つのビデオ映像を用いて児童に運動の自己評価をさせ,その記述から運動経過の把握内容の違いを検討した.その結果,教師が重点的に教えたいと考え,ほぼ全時間を通して継続的に教師が提示した3つの運動課題を中心に児童が運動を観察していることが推察された.また,教師が指導したことを運動課題別に比較すると,「跳ねのタイミング」については「2画面比較映像による自己評価」で記述している児童数が多かった.「跳ねのタイミング」は,モデル映像と比較することで動きの違いに気づいたのではないかと推察された. 次に,2画面だけでなく,4画面で同時再生する動画映像を用いた動画テストを開発し,児童が観察する際の着眼点に違いが見られるかどうか,小学校3年生を対象に調査を実施し,収集したデータを検討した。その結果,運動について,複数の観点から運動を観察し「思考・判断」させたい場合は,観点ごとの違いが明確になる4画面動画の方が,児童の理解度をより反映した回答を期待できる動画テストであることが示唆された。しかしながら,動画映像が増えたことによって,観察の着眼点が拡散したことが推察されたため,発達段階に応じた活用方法の検討が必要である。
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