研究課題/領域番号 |
16K01640
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
小室 弘毅 関西大学, 人間健康学部, 准教授 (30551709)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マインドフルネス / 修養 / 身体性 / ソマティック |
研究実績の概要 |
「マインドフルネス」に関する論文、書籍はこの1年でも膨大な量が刊行された。医学、心理学、仏教と様々な領域から論じられ、特に書籍では初学者向けのものが大量に出版され、一大ブームとなりつつあることがうかがえる。一方で「修養」に関するものは、全体としても少ないが、特に概念としてのものに関しては決して多いとは言えない。よって、本年度の資料収集と分析は「マインドフルネス」を中心に行うこととなった。 フィールド調査に関しては、サンフランシスコ禅センター所長の藤田一照氏という、仏教界における「マインドフルネス」の旗手ともいうべき人物にコンタクトをとり、講座への参与観察とインタビューを行い、現在の「マインドフルネス」ブームの問題点などに関して聞き取りを行った。藤田氏はアメリカで禅を教えるに際して、精神論としての禅以上に身体論としての禅を重視して指導されており、それは日本での指導でも同様であり、そのことが藤田氏を仏教界においても特異な位置に置いている。そこから浮かび上がってきたのが、身体性の欠如という観点であり、「ソマティック」という概念の重要性であった。現在の「マインドフルネス」ブームは心理学が牽引していることから、自ずと心理中心の「マインドフルネス」になり、身体性や身心一如を意味する「ソマティック」が見失われていることが見えてきた。 そういった意味で、「修養」という身体性を重視した概念を通して「マインドフルネス」を見ることで、「マインドフルネス」の「ソマティック」な側面に光が当たることになることが推察される。そのことにより、単に技法としての「マインドフルネス」を教育に導入するのではなく、その概念の、より本質的な部分を導入できる可能性があることが見えてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「マインドフルネス」に関する研究論文と書籍の刊行が膨大な量に上り、その資料収集・分析に当初の予定以上に時間と労力がかかっている。対象とする概念が、研究領域だけでなく一般領域にも広がり、一大ブームの様相を呈していることによるものである。そのため、当初の計画通りにいかない部分もでてきたが、一方の「修養」概念の調査が順調なため、おおむね計画通りの進展と言える。 フィールド調査も、本年は身体心理療法である「ハコミ」を中心とする予定であったが、サンフランシスコ禅センター所長である藤田一照氏とコンタクトを取り、禅の観点から「マインドフルネス」について調査することができ、心理学をベースとする「ハコミ」より一歩進めて、仏教そのものから「マインドフルネス」について検討することができた。そういった意味でも、変更はありつつも、研究はおおむね順調に進展していると言えるだろう。
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今後の研究の推進方策 |
本年は引き続き、「マインドフルネス」、「修養」に関する資料収集と分析を行う。また、「マインドフルネス」と「修養」をつなぐ鍵概念である「念」に関しても、特にそれを自身の教育思想の根幹に据えた中村春二や彼の生きた時代である大正期の自由教育に関する資料の分析を行う。その上で、「マインドフルネス」と「修養」概念の理論的接続の可能性を探る。 フィールド調査に関しては、上座部仏教国であるタイのスカトー寺にて行う。参与観察とインタビューから、文化としてのマインドフルネスの概要を明らかにしていく。 また、「ソマティック」概念に関してもフィールドと文献の両面から調査を行い、身体性を伴った「マインドフルネス」のあり方を調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定の図書の発刊が遅れたため。
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次年度使用額の使用計画 |
購入予定の図書が発刊され次第、購入する。
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