研究課題/領域番号 |
16K01640
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
小室 弘毅 関西大学, 人間健康学部, 准教授 (30551709)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マインドフルネス / 修養 / 身体性 / ソマティック / 身心一如 / 身体教育学 |
研究実績の概要 |
前年度の研究で明らかになった、近年ブームとなっている「マインドフルネス」における身体性の欠如という問題と、そこから浮上してきた身心一如を意味する「ソマティック」という概念の重要性に関して、当該年度は集中的に調査を行うことができた。 台湾の台東大学にある「身心整合與運動休閒産業學系(Department of Somatics and Sport Leisure Industry)」で東西のソマティクス並びにソマティックの調査、研究を行った。世界で唯一ソマティックの名を冠した学部である台東大学身心整合與運動休閒産業學系では、西洋由来のソマティクスと東洋由来の気功、太極拳、足つぼマッサージといった東西の身心技法を体系的に教え、その融合を試みている。そこで具体的な技法としてのソマティックの調査、研究を行った。そこ明らかとなったのは、身と心の融合の困難さであり、東洋由来の技法と西洋由来の技法の融合の困難さであった。これは、「マインドフルネス」を日本に導入するに当たっての大きな課題であり、本研究において解決すべき問題でもあり、この調査、研究により、課題がより明確になった。 また、8月と2月にはタイのスカトー寺においてフィールド調査を行うと同時に、そこの副住職であるプラユキ・ナラテボー氏に聞き取り調査を行った。上座部仏教国であるタイの「マインドフルネス」について調査することによって、技法や概念としての「マインドフルネス」の背後にある文化・文脈の重要性が明らかになった。この調査により、「マインドフルネス」を日本の教育に導入するに当たっても、それを受け入れる文脈や土壌をいかに整えるかが問題となることが見えてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、海外での調査が中心となったため、「修養」概念に対する調査、研究が若干の滞りを見せたが、一方で台湾での調査、タイでの2回の調査を行うことができ、その点に関しては当初の計画以上に調査、研究の内容が深まったと考えられる。「マインドフルネス」が持つ意味内容、それが抱えている問題が明らかになり、今後の課題に関しても、より明確に、鮮明になってきている。 そういった意味で、全体を見た時に研究の進捗状況はおおむね計画通りに進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、引き続き「マインドフルネス」並びに「修養」概念に関する資料収集と分析を行う。本年は特に近代日本における「修養」概念に関する分析を集中的に行い、それと「マインドフルネス」との接点を探っていく。「マインドフルネス」の原語である「念」をキーワードとして、それを教育において重視した成蹊学園創立者中村春二等大正期自由教育の教育者たち、そして彼らに影響を与えた明治大正期の身体観、身体文化に関する資料の収集と分析、検討を行う。この「念」概念をつなぎ目として、「マインドフルネス」と「修養」概念との理論的接続を図り、それの教育への応用可能性を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定の図書の発刊が遅れたためであり、購入予定の図書が発刊され次第購入する。 また在外研究で海外の研究機関にいたため、調査研究計画に若干の変更があったため、旅費に関しては本年度に資料収集、フィールド調査、学会旅費として執行する。
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