研究課題/領域番号 |
16K01642
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研究機関 | 山陽学園大学 |
研究代表者 |
近藤 卓 山陽学園大学, 総合人間学部, 教授(移行) (60266450)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | いのちの教育 / 学校 / プログラム / 実践研究 |
研究実績の概要 |
学校教育の現場における、児童・生徒のいじめや不登校などの問題が、きわめて深刻な状況である。とりわけいじめの問題は、自殺や自殺未遂などを引き起こす、まさに命に係わる大きな問題となっている。そうした中で、学校現場では「いのちの教育」の必要性が益々高まっている。また、一人一人の子どもをつぶさに観察し、個別の対応をすることの必要性も高まっている。 そこで、本研究ではこれまで研究代表者の近藤が継続的に行ってきた研究、例えば科学研究費補助金による基盤研究(C)研究課題名;子どもの死の認識と自尊感情を育む教育プログラムの開発(課題番号;25350735)などの成果を踏まえ、実践的なプログラムの開発を目指し、さらにそのプログラムを標準化することを目指している。そのためには、異なる学校種における複数の学校で実施することが必要になる。初年度である28年度は、そうした意味では限られた学校種と学校数での実践であったが、今後の展開の基礎的な知見を得ることができたと考えている。 平成28年度には、中国地方の公立中学校と高等学校において、いのちの授業の実践を行った。これらの結果について、日本学校保健学会第62回大会(茨城県・筑波大学、2016年11月)での教育講演「いのちの教育と自尊感情~心的外傷後成長(PTG)を支えるもの~」で報告し、さらに第18回日本いのちの教育学会(山陽学園大学、2017年2月)において「健康教育としてのいのちの授業~保健学習「ストレスの対処と心の健康~感情の共有と自尊感情~」」として発表した。また、論文『A合唱団における自尊感情の変化について~中国地方の中高生対象の音楽教育活動から~』として『山陽論叢』第23巻(山陽学園大学、2017年3月10日)に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度はいのちの授業の実践と基本的自尊感情に関する量的調査を行うこととしていたが、その点では実現ができず推移したが、共有体験場面を意識的に多く取り入れた、「いのち」に関するテーマの授業を企画し、実施することについては予定通り実施することができた。本授業を実施することで、他者との共有体験を通して、自尊感情が育まれることを明らかにすることとしていたとおり、量的な調査は実現できなかったが、質的な調査は実施することができた。なお、授業内容は、研究代表者、研究協力者、研究補助員らが企画・立案し、当該校の教諭・養護教諭らと議論を重ねて完成させるとの当初の予定通りに実施できた。 対象としては、全国の小・中・高等学校から調査対象校を募集するとしていたが、本年度は中国地方を中心とした崇高での調査にとどまっている。この点については、これまで準備段階にとどまっていた複数の対象校において、来年度以降の教育実践の実現と調査の実施を目指すこととしたい。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に実施した少数の学校を対象とした教育実践を、平成29年度も進めつつ対象校を広げるとともに、その検証をおこなっていきたい。多くの学校において、これまでの成果を適用しつつ、その検証を進め標準化を図りたいと考えている。とりわけ、自尊感情の理論と実践の領域において、より実用的な調査ツールを標準化する努力を続けるとともに、教育方法のプログラム化をより実用的なレベルにまで引き上げることに注力したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
相当数(20校前後)の小・中・高等学校でのプログラム実践および量的調査を予定していたが、主に中国地方の学校での実践にとどまり、それらが予定より少ないまま推移したため、年度当初の使用額まで達しないまま年度を終了することとなった。 こうした事態に至った理由として最も大きなものとしては、予想に反して協力校が得られなかったことである。いのちの教育のプログラムの実践については、対象校の教諭らとの綿密な打ち合わせを繰り返し、緻密な準備を重ねたうえで実践に臨む必要があるのは当然のことである。そうした本研究の実施計画について、現場の教員との合意を得るための時間が十分に得られず、編成28年度は当初の計画を十分に遂行できずに終わった。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度の経験を踏まえて、平成29年度は少しでも多くの学校現場で、いのちの授業の実践を行いたいと考えている。そもそも、いのちの授業の実践がどのようなもので、どのような準備が必要であったり、どのような事後の対応が必要なのかなど、基本的な理解を得ることもこうした実践的な研究には欠かせないことである。 そうした意味で、平成29年度においては、学校教育の現場においてこれまでの研究の成果を還元し、教職員の理解を深めることにもさらに注力したい。そうした活動を踏まえることで、今後のプログラム実践の足掛かりを得ることとしたいと考えている。
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