本研究は,競技力を構成する契機の1つでありながら,他の2つの契機,すなわち,身体性と知性を統御する上で重要な役割を果たしている「価値判断にかかわる能力」である「感性」に着目し,他と比して最も複雑な特性を有するバスケットボールを対象に,競技力の製作者として未だ解明がなされていないチームとコーチの価値判断の基準と規範的原理の抉出を試みることで,すでにその解明を終えている競技者と併せて,チーム,コーチの相互作用から成るチームの戦い方に,恒常的な客観的妥当性を与え得る「実践上の指針」を究明することを目的としたものである. この目的を達成するために,この3年間、日・独・米のチームスポーツやバスケットボールならびに感性に言及している文献とそれらを基礎づける外延的な文献の収集に努め,それらの精読を通じて、まず「チームにおける感性」の内実を分類・整理・分析することで概念化と定式化を試みてきた. しかしながら,これまで上記「チームにおける感性」は脱稿し投稿したが、現在、審査中である.また、「コーチにおける感性」には取り掛かることができず、当初予定していた「競技者」「チーム」「コーチ」それぞれを「競技力」の製作者とし、それら3者から成る「スポーツにおける感性論」という新たな地平の開拓と展開までは至らなかった。なお、チームやコーチの「感性」にかかわって重要な意味を持つ「コーチング」の学的基礎づけについて国際的な評価を得るために行った国際誌投稿は不採択となったが、目下修正中であり再投稿を行う予定でいる.また、外延的事項とはいえ、本研究を基礎づけるバスケットボール競技やコーチングにかかわる成果は、体育学研究をはじめ他の全国誌に原著筆頭論文を2編、さらに、体育学会での「キーノートレクチャー」と日本バスケットボール学会で「基調講演」を依頼ないし指名されるなど、高い評価を得たといえる.
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